悠木碧×大塚剛央「距離感は近くなっているかも」 『薬屋のひとりごと』での再会を経て
華やかな後宮の深奥に潜む陰謀と毒。2025年1月10日より第2期の放送を控える『薬屋のひとりごと』は、毒と薬に異常なまでの執着を持つ花街育ちの薬師・猫猫と、その才知に惹かれる後宮管理人・壬氏を軸に、謎解きと心理劇を紡ぎ出し、アニメファンの枠を超えた支持を集めてきた作品だ。 【写真】悠木碧、『薬屋のひとりごと』第2期に意気込み(複数) 猫猫は類まれな観察眼と冷静な判断力で次々と事件の核心に迫っていく。猫猫と壬氏は、身分や立場の違いから、踏み越えることのない一線を保っている。その独特な距離感は、従来の「後宮もの」にない新鮮な魅力として、作品の評価を確実に高めてきた。新たなキャラクターも加わる第2期では、その関係性にも期待が高まる。 猫猫と壬氏の声を務めるのは、悠木碧と大塚剛央だ。その繊細な演技が紡ぎ出す猫猫と壬氏の関係性は、多くの視聴者の心を捉え、作品の魅力を一層深めてきた。実力派が集う現場で、2人はどのような手応えを感じているのか。第2期への期待とともに語った。
悠木碧×大塚剛央が語る猫猫と壬氏の魅力
ーー『薬屋のひとりごと』第1期は、各配信サービスで最新話の配信があるたびにランキング上位に入るなど、大きな反響を呼びました。 悠木碧(以下、悠木):丁寧に作られた作品がしっかりと評価されることに、大きな喜びを感じています。我々キャストはもちろんですが、長沼範裕監督をはじめスタッフのみなさんが大きな愛と情熱を注いで作られたものを視聴者の皆さんに評価していただけて……。第2期の放送を楽しみに待ってくださる方がいるという状況に、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。 ーーアニメファンの方はもちろん、普段アニメを観ない方からも「『薬屋のひとりごと』を観てる」と会話に上がることも多かったです。 悠木:本当にありがたいです。SNSでの広がりもそうですし、タクシーで年配の運転手さんに声で気づいていただいたこともありました。「妻が夢中で観ている」と言ってくれて嬉しかったです(笑)。 大塚剛央(以下、大塚):わかります。僕の周りでも同じような反響がありました。久しく連絡を取っていなかった同級生や親戚からも「楽しく観てるよ!」という声をいただき嬉しかったです。アフレコはもちろんのこと、作画や音楽まで、とにかく全てが綿密に計算されて作られているからこそ幅広い年代の方々に楽しんでいただけたんじゃないかなと思います。 ーー演じられた猫猫と壬氏について、第1期を伴走してきたからこそ見えてきたキャラクターの魅力を聞かせてください。 悠木:みなさんもお気づきだと思うんですけど、猫猫の魅力って、つれないところなんですよね(笑)。本編を見返すと「壬氏がこんなに思いやってるのに!」って思うんです。でも、そこが愛おしいというか。簡単に心を開かない猫猫が、なんだか愛しくもあり、もどかしくもある。そこが彼女の魅力かなと思います。壬氏については、健気でかわいらしいですね。すごく頑張り屋さんだし、まともな人なんです。 大塚:壬氏は立場上いろいろな板挟みもありながら、頑張っていますよね。猫猫のことを想う気持ちはあるのに、不器用な方法ばかり取ってしまうところが、きっと彼の魅力のひとつだと思います。 悠木:そうそう、アニメのキャラクターってちょっと常識はずれな人も多いじゃないですか。でも壬氏は、ちゃんと仕事もできるし、周りへの思いやりもある。そんなに出来た人なのに、気になる子には全然振り向いてもらえない。何でも持ってる人に、たった一つ手に入らないものがあるからこそ、魅力的に見えるのかも。 大塚:壬氏にとっての猫猫は、少しでも懐いてくれたら嬉しくて仕方ない、そんな存在なんだと思います。今まで自分の思い通りにいっていたことが、猫猫には全然効かない。その歯がゆさと魅力の両方に、どんどん引き込まれていくような……まさに猫のような子というか。 ーーそんな猫猫と壬氏を演じるにあたって、第1期から引き継いでいることや、新しく意識されていることはありますか? 悠木:基本的には今まで通りのイメージを大切にしています。視聴者の皆さんにとっても第1期からそれほど時間が経っていないので、ガラッと変えずにいきたいなと思っています。続編だということを大事にしながら、でも猫猫が壬氏に少し馴染んできているので、その分の距離感は近くなっているかもしれません。今期からは子翠という新キャラクターも登場して、明るいキャラクターも増えてくるので、その空気感も大切にしています。壬氏や高順たち高官と話すときと、職場の同僚と話すときの違いが、より自然に表現できるようになってきたかなと感じています。 大塚:壬氏は、誰とどこでどんな話をしているのか。その場面ごとの温度感は常に意識していかないといけないところです。ディレクションを頂くこともありますが、例えば内容自体はシリアスな話でも、猫猫と話しているときは必ずしも重い空気であるばかりではない。少し話せて嬉しかったり、いろいろな感情が混ざっていたり。だからこそ、「誰と話しているのか」ということは大切にしています。 ーーでは、今改めてお相手の役者の方と一緒に仕事ができて良かったと感じる部分は? 悠木:大塚くんは本当に仕事ができるんですよ。たくさん取材をしていただいて、ネタバレになるので言えないことも多い中で、「大塚くんに任せておけば大丈夫かな」って安心できる存在ですね。アフレコはもちろん、普段の立ち振る舞いも。必要な言葉をちゃんと選んで話せる、頭の良い人だなって思います(笑)。 大塚:いえいえ! こういう取材も特番も、アフレコもそうなんですけど、僕は悠木さんが作る空気感にいつも助けられてます。自然と引き込まれていくような、そういう空気を作るのが本当にお上手なんです。 ーー大塚さんがおっしゃったような“空気感”は、悠木さんご自身としては意識的につくっていらっしゃる部分なのでしょうか? 悠木:『薬屋』のキャストは本当に実力派揃いで、演技の腕に自信のある方たちが集められているんです。だからこそ、アフレコ前はみんなでわちゃわちゃしていても大丈夫だろうって。「はい、スタート!」って時になったら、みんなパッと切り替えられるから。それから、私自身、集中しすぎるとすごく噛んじゃうんですよ。みんなのおかげで前向きにアフレコに臨めています。 ーーメリハリをつけていくと。 悠木:はい、なのでいざマイクが回り始めたら、きちんとリズムを作らないといけないなって。それこそ、猫猫はセリフ量が多いので、私が延々としゃべり続けるから(笑)。正直すごく緊張してるんです。私がうまくいかないとアフレコが終わらないし、早くみんなを帰してあげたいという気持ちで、いつも必死です。 大塚:『薬屋のひとりごと』という作品の持つ空気感は、悠木さんの演じる猫猫があってこそだと感じています。アフレコでも、その空気感を壊さないように気をつけています。一緒にお仕事させていただけて、本当に光栄です。 ーーアニメ1期で全24話、さらに悠木さんはドラマCDの頃から猫猫を演じられていて、キャラクターとの付き合いも長いですよね。 悠木:ドラマCDとアニメではアプローチも変わってきますし、最近だとコラボや、イラストに合わせた声とか、いろいろな形で演じる機会があって。長く付き合っていく中で、メディアミックスによってアプローチが変わる。それが楽しさでもあり、難しさでもありますね。 大塚:同じキャラクターを長く演じられるのは、本当に嬉しいです。そうした中で、「こういう面もあるのかな」とか、常にチャレンジ精神を持ちながらやっています。壬氏の可能性を広げつつ、魅力をしっかり伝えられるように。長く付き合っているからこそ見えてくるものもありますね。 ーーたとえばこれまでの壬氏で言うと、具体的にどういったところでチャレンジを意識されたのでしょう? 大塚:第1期で言うと、猫猫に対する態度ですね。監督からのディレクションも頂きながら、例えば子供っぽさが出る場面。でもただの子供っぽさじゃなくて、「まだ女の子というものがよく分かってない」という恥ずかしさみたいなものがあったり。演じながら「こういう表現もあるんだ」という気づきがあって。物語が進むにつれて、いろいろな面が見えてくるのが楽しいですね。 悠木:猫猫は、シーンごとにメリハリをつけたいのか、ストーリーを滑らかに見せたいのかで、少し味付けが変わったりするんです。痛い目もいっぱい見てきていて、心の防御壁がそれなりに厚いから、成長という意味ではゆっくりかもしれない。 大塚:彼女はいろんなことを経験してますからね。 悠木:そうそう。壬氏はほら、今が成長期じゃないですか! 大塚:(笑)。でも本当そうですね。 悠木:何でも持っている人が苦しんでいる姿ってかわいらしいですよね。「こんなに完璧に見える人でも、人間らしくもがいたり悩みがあったりするんだ!」って。そこに共感が生まれるのかなと思います。