「さくら前線」せいじが感じた雪桜の息吹「青臭い感情を取り戻した1年だった」【ソロインタビュー連載第3回】
異彩を放つ演歌歌謡グループが2025年の飛躍を目指している。ヴィジュアル演歌歌謡グループ「さくら前線」。11月10日をもって「最美桜前線」(もがみざくらぜんせん)から改名し、初シングル「雪桜」をリリース。見事、オリコン週間演歌・歌謡ランキングで1位を獲得した。現役ヴィジュアル系バンドマンとしての顔を併せ持つこうき、つかさ、せいじが、新たな名前とともに描く未来図とは?来年、さらなる大輪の桜を咲かせようと奮闘する3人の素顔に迫るソロインタビューを敢行。第3回はせいじが登場します。 ――11月10日のライブをもってグループ名を「さくら前線」に改名されました。改名後、1か月半が経ちますが、現在の心境や周囲の反応はいかがでしょうか。 せいじ「周囲の反応という点では、まだそこまで実感はないんですけど、自分たちが改名しようと思った理由が明確にありました。僕が特に感じたのは、元のグループ名『最美桜前線』の読み方が難しかった点です。 もともと、最上川司(=つかさ)と花見桜こうき(=こうき)が主催する『最上桜劇場』というイベントがあり、それに僕が後から参加しました。その時に『最上桜』という看板名がすでに存在していたんです。当時の漢字は『最上』でした。それが僕(ソロ活動名義は美良政次)が入ったときに美を入れてもいいんじゃないかという話になって、『最美桜』でもがみざくらにしました。でも、親や親戚に『もみざくらはどうなってるの?』って言われてたんです。これはヤバいと。身内ですらはっきり分かっていない。自分たちがどれだけ知名度を上げても読み方がネックになるのではないかと思い、メンバーで何度も話し合いを重ねました」 ――具体的にはどのようなきっかけで改名を決断されたのでしょうか。 せいじ「一番のきっかけは、ファーストアルバムのリリース準備をしている時でした。CDを売るために宣伝しなきゃいけないのに、肝心のグループ名が読めないというのは大きなハードルだと感じたんです。それに、元々のグループ名には『桜前線のように北上して、笑顔の花を咲かせていくグループになりたい』という思いが込められていたので、初心に立ち返ってシンプルに『さくら前線』にするのが一番しっくりくるという結論になりました」 ――実際、改名したことでの手応えは? せいじ「僕ら自身にはすごくしっくりきています。ただ、今まで応援してくださっていたファンの皆さんには少し戸惑わせてしまったかなという気持ちもあります。元のグループ名には3人の名前が1文字ずつ入っていて愛着を持ってくださっていたので。でも、ファンの方たちが他の人に紹介してくれる時にどうしてもネックにしまっていたんです。より伝えやすい名前にする必要があると考えて、心を鬼にして決断しました」 ――改名にあたって寂しさなどはありませんでしたか? せいじ「読んでいただけるグループ名になったのですっきりしましたが、寂しさはあります。ただ、元の名前は『最美桜音頭』という楽曲のタイトルとして残っているので、それはそれで良い形で記憶に刻まれるのかなと思っています」 ――初シングル「雪桜」はどのような作品に仕上がりましたか。 せいじ「まず、さくら前線の新たなアーティスト写真を撮ることになり、その時に全員で『桜色をメインカラーにした衣装を作ろう』と決めました。そして、その衣装にふさわしい曲を考えた際、桜にちなんだ楽曲にしようという話になり、冬のリリースというタイミングも考えて、つかさくんが『雪桜っていう響ききれいですね』と言ってくれて。この名前が決まった瞬間から、つかさくんが楽曲の構想を練り始めてくれましたね」 ――桜と雪というモチーフは非常に印象的ですね。曲のテーマやメッセージについて教えてください。 せいじ「この曲は、自分たちの思いや夢が“雪”に閉ざされているような状態から、それを“春”に向けて解放していく応援歌として作りました。タイトルは冬をイメージしていますが、季節に関係なく歌えるメッセージ性の強い曲になっています」 ――せいじさんが作られた楽曲についても教えていただけますか。 せいじ「通常版には『酔えば酔うほど』という曲が収録されています。男女で歌うムード歌謡をイメージした世界観に仕上げています。また、せいじ盤には『そぎおとせ音頭』という楽曲が収録されていて、こちらは明るくみんなで楽しめる音頭調の曲です。どちらも、さくら前線の持つ明るいエネルギーを感じてもらえる内容になっています」 ――普段のバンド活動とは、全く違うアプローチですね。 せいじ「僕のバンド活動では“暗黒”をテーマにしていますが、さくら前線では笑顔がテーマ。真逆の世界観を表現しています。僕自身、役者のような感覚で取り組んでいて、さくら前線ではせいちゃんという明るいキャラクターとして、Moi dix Moisというバンドでは暗闇をまとったダークな主人公を演じている感じです。素の自分が中間地点にいるイメージですね。さくら前線にいると陽のスイッチが入り、バンドでは陰のスイッチが入ります」 ――2024年を振り返って思い出深いエピソードはありますか。 せいじ「やはり『雪桜』でオリコン1位を目指してファンの皆さんと全力で走り抜けた期間ですね。その2か月半ぐらいはとても濃密で、スケジュールもハードでしたが、終わった時には寂しさを覚えるほど充実していました。メンバーがそれぞれ地方でのライブ活動などで3人そろって動けない時期もありましたが、そんな時に『僕たちは3人だからこそ強い』と実感しました。参加できなかったメンバーが戻ってきた時にまた自然に一緒に活動できるよう、離れている間もお互いを信じて全力で頑張れたことが、とても青春っぽい経験として心に残っています」 ――青春を再び感じられるような1年だったわけですね。 せいじ「年齢を重ねると忘れがちな青臭い感情を取り戻せた1年でした。ファンの皆さんと一緒に走り抜けた時間は、これからの活動の原動力になると思います」 ――グループとして「紅白歌合戦出場」を目標に掲げているそうですが、その理由や思いについて教えてください。 せいじ「個人として紅白に出たいというよりは、今まで応援してくれている家族やファンの皆さんのために出たいという気持ちです。応援してくれている人たちが『さくら前線を応援してるんだ』と堂々と言えるようにしたいんです。現状、僕たちの見た目や活動を見て、誤解を受けたり、軽く見られることもあると思うんですが、紅白に出ることで世間の認知度が上がれば、そういう偏見が払拭されるのではないかと考えています。ファンの皆さんが自信を持って応援してきたことが正しかったと誇れるように、そのためにも紅白を目指したいですね」 ――最後に2025年の抱負とグループのテーマを教えていただけますか。 せいじ「グループとしては『雪桜』で1位を取らせていただいたことが、ファンの皆さんが僕たちに授けてくれた“看板”だと思っています。この看板を掲げて、もっと多くの人に『さくら前線』を全国の皆さんに知ってもらえるように活動していきたいです。お年寄りの方から若い方まで、幅広い世代に届けることが目標です。個人的には、誰に聞いてもらっても『この人は歌が上手い』と思ってもらえるように、さらに歌の実力を磨いていきたいと思っています。馬鹿にされないように、自分自身をもっと成長させて、ファンの皆さんが胸を張って応援できるグループでありたいですね」