とべ動物園のアイドル「ピース」奇跡の25年間 手探りの人工哺育や命の危機を乗り越え…家族の一員として育てた男性
2024年に25歳の誕生日を迎えた愛媛県立とべ動物園のアイドル、ホッキョクグマのピース。人工哺育の困難や命の危機を乗り越え、今なお全国のファンを魅了し続ける、25年間の奇跡の物語に迫る。 【画像】まるで動くぬいぐるみ…生まれたばかりのふわふわなピースを見る
誕生日を迎えた動物園のアイドル
2024年12月2日、25歳の誕生日。とべ動物園のホッキョクグマ・ピースに、全国のファンからりんごやイラストなど沢山のプレゼントが届いた。 誕生から四半世紀。ピースを我が子のように育ててきた飼育担当の高市敦広キーパー。 「座ってあっち向いてたらお正月の鏡餅みたい。みかんを頭に乗っけてやろうかなと思う」と笑いながら語り、その目には、今も変わらぬ愛情が宿る。
命がけの出産と運命の出会い
1999年12月2日、メスのバリーバとオスのパールとの間にピースが誕生した。 この日、高市キーパーは休日で自宅にいた。高市キーパーは「昼食を食べようかと思った矢先に電話が鳴って、ホッキョクグマが産まれましたって言うんですよ。まあびっくりしてね」と当時を振り返る。 「もう車をとばしてとべ動物園まで一直線で来て、車の中では神様どうか子供を守ってくださいと祈りながら」駆けつけたという。ピースを産んだ直後、初めての出産だった母親のバリーバは興奮状態になり、とべ動物園は危険を避けるために赤ちゃんを保護し、人工哺育を決意した。 しかし、ホッキョクグマの人工哺育は国内でも成功例がなく、ミルクの種類から排泄の仕方まで、何もかもが手探りだった。 高市キーパーは「見た瞬間元気に泣いてる。絶対に育てるぞって思ったのを覚えています。ピースには私しかいませんからね。母ぐまになったつもりで、母ぐまだったら何をするだろうなっていうことを想像しながらやってました」と語った。 この日から、ピースは高市キーパーにとって娘のような存在となった。
「家族の一員として」つきっきりの育児
高市キーパーは、生まれたその日からピースを自宅に連れ帰り、2人の子どもたちとともに家族の一員として育てた。 3時間おきのミルクはもちろん、暑さが苦手なピースのために真冬でも暖房器具を使わず過ごすなど、つきっきりで育児を続けた。 このころのピースは真ん丸としたフォルムで、「動くぬいぐるみ」のようだったという。 高市キーパーは「今、過去の2か月3か月ごろのピースを見たら、これぬいぐるみよりかわいいなと思うんですけど、当時にはその感覚がないんですよね不思議と。それよりも心配事や不安が先に来ちゃって」と当時を振り返る。 生後105日目には一般公開がスタートした。その5日後には、ピースを動物園に置いて帰るようになった。 高市キーパーは「初日は私も心を鬼にして帰ったんだけど、警備員さんに聞くと一晩中鳴いてるって。何日か私が動物園に来ると、鳴こうにも声が鳴きすぎてかすれて声が出ないんですよ。口は開けるんだけど声が出ないくらいになっちゃってて。これはストレスでダメになっちゃうんじゃないっていう心配もしたんですけど、賢いですから少しずつ慣れていってですね」と語る。