<杖と剣のウィストリア>最終回の見どころは「ヒートアップするアクション」プロデューサー陣が明かす制作の舞台裏
アニメ『杖と剣のウィストリア』(毎週日曜午後4時30分~、TBS系ほか)が現在好評放送中。原作は、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』で知られる大森藤ノによる物語に、青井 聖が作画を務める「別冊少年マガジン」で連載の人気漫画だ。今回は、いよいよクライマックスを迎える本作制作中の峯岸功アニメーションプロデューサー、青山勝樹プロデューサーを取材。魔法が覇権を握る世界で、魔法が全く使えず、剣のみで戦い抜く主人公・ウィルの活躍を圧倒的映像表現で描くファンタジー。制作の裏側をお聞きすると、「面白いアニメを届けたい」というおふたりの熱意を感じて、目前に迫った最終回に期待が膨らむばかりだった。 【写真】主人公ウィル・セルフォルトの優しい笑顔のカット ■吉原監督のアクションへのこだわり (※吉は正しくは「つちよし」) ――あらためて、アニメ制作までの経緯をお聞かせください。 青山P 原作第1巻が発売になったタイミングから読ませていただいていて、講談社さんにアニメ化のご提案をさせていただきました。その後、原作者の大森先生、作画の青井先生含めて承認をいただき、アニメ化することが決まりました。 ――大森先生、青井先生のおふたりからはアニメ化に際して、どんな要望があったのでしょうか? 青山P まず、原作の大森先生もですが、作画担当の青井先生がもともと吉原達矢監督の大変なファンでして。お三方が同じ会議室で打ち合わせする機会が企画発足当初、何度かあったのですが、それぞれがお互いを尊重し合っている関係性ですごく良い雰囲気の中、会話が進んでいきました。 峯岸P 本当にそうでしたね。原作のおふたりと監督の信頼関係が、かなり厚い状態で当初から出来上がっていました。それだけに、お三方がリードしていくような形でプリプロダクションが始まった感じです。 ――吉原監督は、今回ご自身でシリーズ構成、脚本も手掛けられていますよね。 青山P 吉原監督が今作に対する思い入れを強く持っていてくださったことが大きいですね。当初は脚本家さんを立てる可能性もあったのですが、監督がご自分でシリーズ構成もやりたいとおっしゃっていただいたことで、 そこもお願いすることになりました。 ――吉原監督は、どのようなことを大切にしてこの作品に臨まれているようですか。 青山P 原作を何より大事にされています。同時に原作をアニメに落とし込むうえで、どう処理をして進めていくかに注力されていますね。 峯岸P 吉原監督はもともとアニメーター出身ですし、ご自身でもアクションを得意にされている作画マンなんですよね。とにかくアクションシーンをしっかり見せたいという想いが当初からありましたし、その意図は我々も同じでした。 ――アクションの素晴らしさもさることながら、キャラクターがみんな魅力的です。 青山P とくに女性キャラクターの可愛さは、話数を経るごとに際立ってきているんじゃないでしょうか。あと使い魔のキキもすごく いい味を出していますよね。 峯岸P アニメは作っていく中で、キャラ崩れなどが起きたりすることもあるわけですが、そこは非常に気を遣いながら制作していますし、お客さんがこの作品を観るときにキャラクターに思い入れを持っていただけるように奮闘しています。 ※吉原達矢監督の吉は正しくは「つちよし」 ■林ゆうきさんの「魔法を表現する音楽」の力 ――主人公・ウィル・セルフォルト役を天﨑滉平さんが演じています。キャスティングに関してはどのように決まっていったのでしょうか。 青山P 主要キャストのほとんどはオーディションで決めていったのですが、天﨑さんに関しては原作の大森先生のご希望でした。 峯岸P 実際、先生が思い描いていた通り、非常に役にハマっていますよ。天﨑さんがしっかりとキャラクターに命を吹き込んでくれているのを、アフレコでも感じていました。 ――まさにピッタリですよね。実際、他にも個性的かつ魅力的な声優の皆さんが演じられている本作ですが、特に印象的だった方を教えてください。 青山P ユリウス・レインバーグを演じている柿原徹也さんですね。ユリウスはウィルをいじめる役柄として登場するんです。柿原さんが「才能、それ以外に必要ないだろう?」という意地悪なセリフを現場で言い放った時は、モニター越しに見ている僕らも、あまりに素晴らしくてざわつきました(笑)。本編が出来上がってみても、すごく嫌なやつだな、と(笑)。 ――エリートキャラの崩壊ぶりも面白いです(笑)。峯岸Pはいかがですか。 峯岸P その意味では、水中雅章さん演じるシオン・アルスターですかね。声を張り上げてのお芝居が非常に多いんです。そのうえで、シオンというキャラクターをうまく作ってくださっていますし。「ふざけるな!」というセリフの突き抜け方が素晴らしくて、シオンの鬱屈を体現してくださっています。 ――また、本作は林ゆうきさんが手掛ける音楽の力も際立っています。 峯岸P 吉原監督からのリクエストだったのですが、実際ご担当いただけることになりまして。林さんの音楽による世界観があらゆるシーンとうまく噛み合ったことで、本作の非常に大きなファクターになっていると思います。 青山P 吉原監督、林さんと事前に打ち合わせをした際、この作品の音楽で何を重視するかと考えていたとき、お二人が「音楽による魔法の表現」にこだわりたいとおっしゃったんです。実際、魔法を表現するために何をされたかというと、生楽器の演奏にこだわって、それを生のまま出すのではなく、波形編集や加工に徹底して工夫をして作ってくださっています。もう林さんのインスピレーションの凄さですよね。結果、それがめちゃくちゃカッコいいものになって、すごく良かったなと思っています。 ――その他に本作ならではの、強みの部分をどんな点にお感じになっていますか。 青山P 劇伴からの話の流れで言うと、オープニング、エンディングもすごくカッコいいものができたと思っています。PENGUIN RESEARCHさんのオープニングの曲は、王道ファンタジーのワクワク感が映像と曲に表れてますし、エンディングのTRUEさんの楽曲も、ヒロインの魅力が表現されているんです。 ※吉原達矢監督の吉は正しくは「つちよし」 ■ゼロからモノを作っていく過程が喜び ――最終回目前(記事配信時)ですが、全話通して印象深いシーンはありますか。 峯岸P 10話以降はクライマックスに向けて、ずっと戦闘が続く展開になっていまして、ここをどうにかまとめるため、いま現在(取材時)、非常に注力しています。なので、進行中ということもあり、ラスト3話ですね(笑)。 青山P 僕は先程、ユリウスの話をしたのですが、第6話ですね。ユリウスってここで視聴者の皆さんの恨みを買ったと思うんですけど、第7話のラストでボコボコにされるんです。そのラスト50秒のアクションで、ウィルがユリウスを最後にぶっ飛ばすところまでの一連のシーンは、何度見てもテンションが上がりますし、スッキリしますよね(笑)。 ――見直したくなってきました(笑)。ところで、本作はTVerでも最新話が見逃し配信されていますが、お二人はTVerをご覧になったことは? 青山P ネットで話題になっている番組を観る際に活用させていただいていますね。あと、スマホで観たいなと思っているドラマはTVerさんでチェックすることが多いです。 峯岸P 私も本放送を見逃してしまったものを追いかける際に使わせていただいています。ただ年齢的な視力の衰えがありまして…(笑)。スマホではなく、家で大きめのタブレットで観たりしています。 ――あらためて最終話の見どころをお願いします。 青山P ここから先、クライマックスに向けてどんどんボルテージが上がっていきます。それだけに制作は本当に大変で(笑)。けれど、そこまでやれば満足いただける作品ができるはずだとも思っています。最後まで楽しんでいただける作品を期待していただきたいですね。 峯岸P ラストに向かって、アクションも激しく、盛り上がっていきます。いま皆さんに楽しんでいただけるようにと思って、スタッフ一同、一生懸命やがんばって制作しています。 ――放送が待ち遠しいです。最後に、いまお仕事の中で感じられる、アニメーション制作の喜びや、醍醐味をお聞かせください。 青山P 月並みですが、やっぱり作品が完成して、世に出て反響をいただいたときかなと。そして、仕事としてちゃんと作品をヒットさせること。それによってたくさんのスタッフが報われますし、真にやっていてよかったなと思えます。 峯岸P そのとおりですね。やはり作った以上はリリースして、お客さんに観て楽しんでいただくことが大前提ですよね。ただ、私の場合は制作現場に直接関っていることもあって、本当にもうゼロからモノを作っていく過程が好きなんです。たとえば、この作品においては原作というベースがありますが、 原作がないときは、本当にお話どころか、スタッフ=人間もいない(笑)。そういうところから形にして、最終的に映像にしていく。そこが非常にやりがいを感じる部分ですし、いつも楽しい部分でもありますね。 ■取材・文/河内文博(アンチェイン)