米国の高関税政策で「トランプ・インフレ」発生の恐怖 ビットコインの「バブル崩壊」なら金融不安を招きかねない
トランプ氏再選後にビットコイン高騰
暗号資産(仮想通貨)の草分け的存在であるビットコインの価格高騰も、トランプ氏勝利後の特徴的な現象だ。11月の大統領選挙後に約5割上昇し、10万ドルの大台を突破した。その後も勢いが続いている。 ビットコインの発行枚数は、値崩れを防ぐ目的で上限2100万枚と決まっているため、人気に火が付けば一気に価格が上昇しやすい性質を有している。トランプ次期政権の方針が追い風となっているのは間違いない。 トランプ氏は米証券取引委員会(SEC)の次期委員長に仮想通貨推進派のポール・アトキンス氏を起用するなど、業界寄りの姿勢を鮮明にしている。 この政策の背景には仮想通貨業界の活発なロビー活動に加えて、トランプ氏を大統領選挙で支持した若年男性への恩返しの意味があると筆者は考えている。12月12日付ウォール・ストリート・ジャーナルが報じているように、若年男性は暗号資産などのハイリスク投資に熱心だからだ。 米政府は現在、刑事事件で押収したビットコインを約20万コイン(200億ドル相当)保有しているが、ワシントンでは政府がビットコインの戦略備蓄を始めるべきとの主張が出ている。
高騰した本当の理由
シンシア・ルミス上院議員(共和党、ワイオミング州選出)は、政府が今後5年間でさらに100万ビットコインを購入し、その後、少なくとも20年間備蓄することを義務づける法案を提出した。 この法案に対しては批判も根強い。石油などの戦略物資と異なり、ビットコインは投機の手段に過ぎないため、価値が急落すれば納税者の負担が莫大な額に上るというのがその理由だ(12月10日付ブルームバーグ)。 だが、ビットコイン高騰の本当の理由は別にあると思う。 配当も利息ももたらさないビットコインの価格が上がっている背景には、ドルなどの既存通貨の信認が薄らいでいるという指摘がある。ビットコインの考案者とされるサトシ・ナカモト氏はかつて「各国政府が管理する通貨のインフレリスクから逃れよう」と主張していたように、ビットコインの価格を押し上げている最大の理由はインフレへの警戒なのだ。