映画『チャーリー』は“名犬”俳優のハイレベルな演技に驚かされる!
このキャラクターが登場するだけで、映画がアピールする層が広がる。それは……犬! 過去にも犬が活躍した作品が予想外にヒット、というケースがたびたび見られた。ラッシーやベンジー、ベートーベンにマーリーといった映画の“名犬”俳優の歴史に新たに加わりそうなのが、このチャーリーだ。 ふたりでいこう どこまでも。そんなキャッチコピーが伝えるように、主人公と犬の関係でエモーショナルな物語の予感が漂う。そして予想どおりとはいえ、猛烈な感動が襲ってくるのが、この『チャーリー』だ。インド映画で犬がここまで重要な役を果たすのが、まず異例。インドでも大ヒットを記録したという。国が変われば文化も変わるが、チャーリーと名付けられたラブラドール・レトリーバーは日本でも人気が高い、おなじみの犬種。だからなのか、インド映画なのに、われわれ日本人も共通の感覚で入り込める。犬の魅力は国境を越えると本作が教えてくれる。孤独に生きてきた主人公のダルマが、野良犬となっていたチャーリーと出会い、貰い手を探しているうちに、離れがたい絆が育まれていく。しかしチャーリーに、ある悲しい事実が発覚し……というドラマ。 映画に登場する犬は、それなりに訓練され、演技にも慣れていることが多い。しかし本作でチャーリーを演じたレトリーバーは、過去の犬映画に比べても実力は相当なハイレベル。注射を嫌がるそぶりや、人から引き離される時の悲しそうな目、好きな相手に前足を乗せる仕草など“犬あるある”を映画的にこなし、癒される瞬間が多数発生。インドのストリートならではの犬の行動は、さすがに日本と違ったりして、その点も楽しめる。一人暮らしのダルマは、チャップリンの映画を観るのが趣味で、そこが本筋に絡むのも映画的な魅力。インド映画なので少々上映時間が長めのため、ダルマとチャーリー、周囲の人々の関係が変わっていく前半は、ややゆったりめ。でもそのゆったり感が、むしろ犬と人間の絆をリアルに実感させるはず。万国共通のペット問題もきっちり訴える。そして後半は旅がメインになるので、サイドカーやパラグライダーなど派手なシーンも急増。感涙のクライマックスの後、エンドロールまで犬好きにはサービス満点の作り! 『チャーリー』6月28日公開 監督・脚本/キランラージ・K 出演/チャーリー、ラクシット・シェッティ、サンギータ・シュリンゲーリ、ラージ・B・シェッティ、ダニシュ・サイト、ボビー・シンハー 配給/インターフィルム 2022年/インド/上映時間164分
文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito