自民裏金問題で「もはや遠い昔」 ウクライナ電撃訪問、日銀総裁交代、G7広島サミット… 岸田首相の「激動の2023年」を振り返ってみた
だが、減税も支持拡大につながらなかった。11月3~5日の共同通信世論調査で62・5%が「評価しない」と回答。内閣支持率は28・3%で、2021年10月の岸田政権発足後で最低だった。 11月後半以降、国会の主要テーマは裏金問題になり、立憲民主党など野党は岸田首相らを厳しく追及した。東京地検特捜部が派閥担当者を任意で聴取したことが明らかになったからだ。12月に旧統一教会関係者と岸田首相の面会報道まで流れ、政権は対応に追われた。 裏金問題を巡っては、安倍派のパーティー券収入のキックバックを、派閥中枢の高木毅、松野博一、西村康稔、萩生田光一、世耕弘成の5氏らが受けていたとされる。松野氏は官房長官、西村氏は経済産業相を務めるなど、5人はいずれも政府や党の要職にいた。 立憲民主党は12月11日、派閥事務総長の経験がある松野氏の不信任決議案を衆院に提出した。12日の本会議で与党の反対により否決されたが、わずか2日後の14日、首相は松野氏など閣僚らを交代させる人事を実施した。安倍派の閣僚4人、副大臣5人、政務官1人が辞任。首相補佐官らも対象となった。政調会長の萩生田氏、国対委員長の高木氏、参院幹事長の世耕氏も辞表を提出した。
国民の目は厳しかった。「安倍派一掃」の人事もむなしく、12月16、17両日の共同通信世論調査で内閣支持率は22・3%と最低を更新。不支持率は65・4%に上った。自民党の支持率は11月から8・1ポイント減の26・0%に落ち込んだ。 東京地検特捜部は12月19日、安倍派と二階派の事務所を家宅捜索した。萩生田氏ら安倍派中枢の5人を事情聴取したことも、その後に判明。さらに27日、池田佳隆衆院議員の議員会館事務所などを家宅捜索した。池田氏側は安倍派から4000万円超を受け取ったと指摘されている。また28日には5000万円超を裏金にしていたとみられる大野泰正参院議員の関係先も家宅捜索。強制捜査は受領議員側にまで及ぶこととなった。自民党は今後も裏金問題に揺れそうだ。 ▽「来年はどうなっちゃうんだろう」 2023年も内閣支持率が低迷する中で始まった。とはいえ、自民党の支持率は40・1%で、10%未満にとどまる他党を引き離していた。また、外交での得点を背景に一時的とはいえ内閣支持率は上昇した。
裏金問題と向き合う2024年、岸田首相を取り巻く環境はより厳しい。検察の捜査が及ぼす影響は底知れない。「政治とカネ」で失った国民の信用を取り戻すのは容易ではないだろう。政権の立て直しは、果たして可能なのか。 冒頭の自民党関係者は「『裏金』が炎上する前の出来事が、もはや遠い昔のようですよ」と述べた後、先行きの見えない不安をこう漏らしていた。「来年はどうなっちゃうんだろう…」