ニオイが気になる今こそ知りたい「ワキガの科学」。日本の研究チームが原因菌の特定に成功!
植松教授によると、人間のワキガは動物のフェロモンに似た性質があるという。 「ワキガに関わるアポクリン汗腺は、動物でフェロモンを分泌する器官が退化したものです。今の人間のワキガがフェロモンとして作用しているかどうかはわかりませんが、ある人の体臭を好ましく感じるかどうかはパートナー選びに関係するという研究もあります。 生まれてくる子供がいろいろな感染症への耐性を持つためには免疫に関わる遺伝子が自分とは異なる人をパートナーに選んだほうがいいのですが、そういう人の体臭は嫌な感じがしないというんですね。逆に近い人の体臭は不快に感じるようです。そういう意味でも、ワキガを含む体臭をあまり敵視するのは考えものです。 それから、人間の嗅覚には多様性があり、ある人の体臭を不快に感じるかどうかには個人差があります。特に自分のにおいには強く不快感を覚えることがわかっていますから、あまり気にしすぎないほうがいいでしょう」 ■いろいろあるワキガ対策 とはいえ、夏になると脇のにおいが気になってくるのも確か。気軽に行なえる対策はないものだろうか? 前出の植松教授はこう語る。 「高カロリー、高脂質の食品はワキガを悪化させるといわれており、食生活の改善は有効でしょう。同様に、禁酒、禁煙も効果があります。 また、ストレスがたまると交感神経が優位になり、発汗が活発になります。これもワキガにつながるので、ストレスをためないことも重要です」 形成外科医でワキガ治療の専門家である、こまちくりにっくの土井秀明医師にもご意見を伺った。 「ワキガ対策はいろいろありますが、ちょっと気になるくらいなら市販の消毒薬を軽くスプレーするくらいで十分でしょう。コロナ禍でいろいろな消毒液が出ましたが、あれらはいずれも皮膚のブドウ球菌にはよく効きます。ただし、かぶれないか注意してください。 保険適用の治療なら、皮膚科で多汗症治療に使われる『ラピフォートワイプ』(マルホ)があります。これは使い捨てのおしぼりみたいなもので、脇の下を拭くとエクリン汗腺からの汗を抑えることができます」 あれ、ワキガの原因はエクリン汗腺ではなくアポクリン汗腺では? 「そのとおりなのですが、汗を減らすことで菌が繁殖しにくくなり、ワキガを改善できるのです。ですから、制汗も意味のある対策です。