「物流現場にリモートワークを」 フォークリフト遠隔操縦 新技術で省人化後押し、NEC
物流現場にもリモートワークを――。NECが、NIPPON EXPRESSホールディングス(NXHD)と共同で、フォークリフトを遠隔操縦して物流現場の省人化を図るシステムの実装を進めている。慢性的な人手不足が続く倉庫や工場の省人化を後押しするものとして、2025年にサービス展開を目指す。 【関連写真】操縦者は画面を見ながらハンドルなどを操作してフォークリフトを操る NECは、無線通信の遅延を抑え、自動搬送ロボット(AGV)の遠隔制御を安定的に行えるシステムを開発。この技術をベースに、システム実装を進めている。 AGVの遠隔制御には、Wi-Fiなどの無線ネットワークが活用される。これまでは、柱や壁による通信品質の低下などで通信の断絶や遅延が起き、AGVの急発進・急停止や、搭載カメラ映像の乱れにより制御が不安定になることが課題だった。 無線通信の遅延を抑えて安定化させるため、NECは、通信状態をパケット単位で分析。変動する通信品質を予測した上で、最も遅延が少ない無線ネットワークに切り替えることでAGVの停止を回避する技術を開発した。 また、通信遅延の変動を抑えるため、通信性能の要件に応じてデータの送信タイミングを調整する通信トラフィックの制御技術も開発。映像データはAGVの稼働に影響のない範囲で遅延を許容しつつ、運行に必要な制御データを優先して送ることで、AGVが安定的に稼働できるようにした。 これらの技術をベースに、NECはNXグループと共同で、24年1月からNXグループの倉庫でフォークリフトを遠隔操縦する自律遠隔ソリューション「テレロボフォーク」の実証検証をスタートした。 テレロボフォークは、既存のフォークリフトにレバーとハンドル、ペダルを制御する装置を搭載。カメラや高精度センサー「LiDAR」などを後付けすることで、遠隔制御と自律運行、搭乗操縦の3モードの切り替えを可能にした。 まず倉庫内の映像データをもとにシミュレーションを行い、輸送ルートを自動で設計。自律制御時には、フォークリフトに搭載したカメラやセンサーなどで認識した周辺の状況をもとに即時にルートを見直すとともに、搬送ルート上の障害物や人などへの衝突リスクを把握して速度を自動調整する。全てのカメラ映像やセンサーデータはクラウドに集約され、倉庫外からの遠隔操作が可能になる。今後、国内5拠点で運用検証を進める。 遠隔でロボットアームを制御し、複数パレットの仕分けや隙間のない積み付け・積み替え作業が行える「テレロボハンドラー」も24年中に現場実証を予定する。 NECデジタルツインビジネスハブの米竹淳一郎シニアプロフェッショナルは「遠隔地からロボットの監視や制御を行うさまざまなシステムに適用できる」とした上で、「物流現場のリモートワークは不可能と思われてきたが、このシステムによって実現できる。現場の省人化だけでなく、常識や働き方など多岐にわたる変革につなげたい」と話した。
電波新聞社 報道本部