【アイスホッケー】五輪最終予選、日本0勝3敗。 ①石田陸(イタリア・HCメラーノ)
「デンマークに目の前で決められた。 これが世界との差なのかなと思いました」
8月末から始まった、ミラノ・コルティナ五輪の最終予選。大会前、デンマークのクラブとのテストマッチをしたが、「あれがよかったと思います。改善点が見えてきたから」と石田は言う。 テストマッチは、第1戦が3-4の延長負け。第2戦は、立ち上がりから6連続失点しての3-8だった。特に2戦目は、本番の試合は大丈夫なのかと、周りの人も不安に思った内容だった。 日本代表は「対外試合」の経験が、今シーズンに入ってからはゼロだった。それぞれの所属チームがプレシーズンマッチを行ったのが、8月の中旬から。代表選手はちょうどデンマーク合宿の移動に重なっていて、対外試合をする機会がなかったのだ。 テストマッチは2試合で終了。そのあと、日本代表は選手ミーティングを経て、五輪最終予選にのぞんだ。 初戦はノルウェーに2-4で負け。先制点は日本だったが、そこからの4連続失点が痛かった。 それでも石田には自信があった。 「自分としてもチームとしても、戦える、勝てることがわかりました。初戦は負けしましたが、外国相手の試合でも最後まで自信があった。体を張って泥くさく貪欲にやれば、次は必ず勝てると思いました」 2戦目のデンマーク戦。2-2のまま、3ピリを終えた。世界ランキング11位のデンマークが24位の日本と、60分を戦い終えて同点だったのだ。 日本とすれば大善戦だ。それでも星勘定から考えると痛手だった。延長になると勝ったチームの勝ち点は「2」、負けたチームは「1」になる。この日の第1試合ではノルウェーが勝っていたので、2試合トータルの勝ち点は「6」。日本は最終戦でイギリスから勝ったところで、最高で「5」にしかならない。つまりデンマーク戦が延長になった段階で、日本はオリンピックの可能性がゼロになったのだ。 それでも石田は、この試合に勝つことで頭がいっぱいだった。 「マイナスのイメージはまったく考えなかったです。頭の片隅にも、負けるなんてことは1ミリもなかった。目の前の試合に勝つ。ただ、それだけでした」。勝ち点の話は、本当にこの日のインタビューで気がついたという。 延長戦は、63分に決着がついた。デンマークはFWラース・イーラー(NHLワシントン)がスコア。カバーに入った石田とFW中島彰吾(レッドイーグルス北海道)が、縦に並んでGKの視界を遮ったスキをついて、ミドルシュートを決められたのだ。 延長を戦い終えて両チームがあいさつするところで、石田は思わずベンチに上がってしまった。 「頭が上げられなかったです。その瞬間、何も考えられなかった。合宿で一緒に頑張ってきたメンバーだったり、応援してくれるちびっ子だったり、日本から見てくれている方への申し訳なさだったり…。もう何も見えないし、何も聞こえない。真っ暗な世界に、ぽつんと1人…そんな感じでした」 「大学4年のインカレ決勝、ユニバーシティゲームズの3位決定戦。僕はこれまで大事な試合で、いつもオーバータイムで負けているんです。延長に入ると、自分の中でネガティブな気持ちになってしまう。今回も、イーラー選手に目の前でシュートを決められた。これが世界との差なのかな、と思ったんです」