10月1日で復元65年、コンクリート造の名古屋城、文化財的価値はあるか 識者は「画期的な構造」と評価、ただ保存には”ネック”が…【企画・NAGOYA発】
◇第32回「尾張名古屋は城でもつ」その2 新たに木造での天守再々建が計画されている名古屋城は城郭としての「旧国宝」第1号として知られる。現国宝で世界遺産にもなった姫路城(兵庫県)に先んじて昭和初期に指定された。ところが明治以降も現存していた天守は1945(昭和20)年に戦災で焼失。戦後の復興のシンボルとして59年に鉄骨鉄筋コンクリート造で復元され、今年10月1日で65年の歳月が経過する。現在の天守が近代和風建築として文化財の価値があるのかも識者に聞いた。(構成・鶴田真也) ◇ ◇ ◇ 名古屋城天守は木造での復元計画が動きだしているが、戦後の復興のシンボルとして市民を支えてきたのが鉄骨鉄筋コンクリート造の再建天守だ。高度成長期における近代和風建築として文化財的価値を指摘する声もあるが、実際にはどうか。
名古屋市出身で城郭建築研究の第一人者でもある広島大の三浦正幸名誉教授は「戦災で焼失した天守を再建するのは市民の願いで、復興天守があることによって戦後の名古屋の発展に大きく寄与した。一般的に見ても50年以上経過した建築物は文化財的価値がある。今の天守は特に近代建築として構造が画期的だった」と語った。 ところがネックになったのが鉄骨鉄筋コンクリートで造ったことだ。二度と燃えない建物に、との思いも込められて1959(昭和34)年に完成。今年10月で丸65年となるが、現在の耐震基準に満たず、鉄筋コンクリートは劣化することから建物の“寿命”の問題にも直面しており、2018年から天守内部への立ち入りを禁止している。
建物を残すには50億円近い予算を投じての耐震補強工事が必要とされるものの、「耐震補強をしたところで耐用年限もある。鉄筋コンクリート構造物の場合は通常50年。長くて80年といわれる。耐震補強しても耐用年限は延びない。補強後も数十年後には取り壊しになってしまう」とも指摘。それならば、木造で再建した方がコストも将来的に安く済むという。