米国務長官指名のルビオ氏、イランやベネズエラ制裁強化に足かせも
Timothy Gardner Vivian Sequera [13日 ロイター] - トランプ次期米大統領が国務長官に起用するマルコ・ルビオ上院議員は、イランとベネズエラに対する制裁をより厳格に実行する方針を打ち出す可能性がある。ただ中国による対抗措置を巡る懸念や、移民対策に与える影響などが強硬姿勢の足かせになりかねない。複数の専門家は13日、こうした見方を示した。 長らく上院外交委員会に属してきたルビオ氏はかねてイランや中国に対して米国がより厳しく臨むべきだとの主張を掲げ、ベネズエラのマドゥロ大統領にも批判的だ。米政府もマドゥロ氏の2回にわたる再選の正当性に異を唱え、石油関連の制裁発動につながっている。 第1次トランプ政権下ではイランの石油生産を標的にした制裁が効果を発揮し、同国の石油輸出はごくわずかに落ち込んだが、バイデン政権になって輸出量は増加に転じた。制裁の実行度合いが弱まった上に、イランが制裁回避手段の確保に成功し、中国が大口の買い手になったためとみられる。 こうした中でジョージ・W・ブッシュ政権でエネルギー顧問を務めたラピダン・エナジーのボブ・マクナリー社長は「ルビオ氏はイラン、ベネズエラ、中国に対するタカ派としての一貫した強烈な履歴を持っている」と指摘。ルビオ氏はバイデン政権時代に中国向けの比率が増大したイランの石油輸出に圧力をかけるトランプ氏の計画を熱心に実行すると予想した。 しかしクリアビュー・エナジー・パートナーズのエネルギー政策アナリスト、ケビン・ブック氏は、強硬な制裁は中国を怒らせ、石油取引においてドル建てが支配的となっている枠組みを揺さぶるなどの報復に動く恐れがあると指摘する。 トランプ氏は9月、中国と、制裁がドルにもたらすさまざまなリスクに言及している。 アトランティック・カウンシルの制裁・マネーロンダリング対策専門家、キンバリー・ドノバン氏は、米政府には既存の強力な制裁措置があり、ルビオ氏は外国のパートナーにもそれを履行するよう迫る可能性があるとした上で、制裁は国家安全保障を追求する上であくまで一手段に過ぎず、常に最善策というわけではないと話す。 「第2次トランプ政権はまず外交政策の目標を決定し、制裁がそうした目標達成の役に立つかどうか判断しなければならない」という。 米政府に各種制裁を統一的に実行するための司令塔となるポジションは存在しない。またルビオ氏は、トランプ氏の意向を何よりもくみ取る必要がある。 <移民対策への影響> ベネズエラ首都カラカスのコンサルティング企業サラ58のルイス・ピチェ・アルテアガ氏は、ルビオ氏の国務長官指名は、米国とベネズエラの関係改善がありそうにないという意味だと説明し、対決姿勢が採用される確率が高いようだと付け加えた。 ブッシュ政権で中南米政策の顧問だったホセ・カルデナス氏は、第2次トランプ政権が最優先する政策はベネズエラへの石油制裁と、米国や外国の石油企業にマドゥロ政権とのビジネスを許容している制度の見直しになると述べた。 バイデン政権は2022年以降、シェブロンやレプソル、ENI、リライアンス・インダストリーズなど一部の企業やベネズエラ国営石油会社(PDVSA)の顧客らがそれぞれ米国と欧州、インドに石油を輸出するのを認めてきた。 そのおかげで先月のベネズエラの石油輸出は日量95万バレルと4年ぶりの高水準に達している。 カルデナス氏は「こうした許可の撤回はマドゥロ氏のほか、ベネズエラの野党や欧州連合(EU)などにも米国がベネズエラにおける民主化に真剣だという強いメッセージを送ることになる」と指摘する。 もっともこの場合もルビオ氏には制約が加わる。専門家からは、制裁をより厳格化すればベネズエラはトランプ氏が目指す不法移民の送還に協力を拒否してもおかしくないとの見方が出ている。