大河ドラマ「光る君へ」ついに最終回、主人公まひろを通り過ぎた4人の男たちを振り返る
ついに大河ドラマ『光る君へ』も最終回へ。平安時代、女性が主人公という、これまでの大河とは全く異なるドラマに魅了された視聴者は少なくありません。 独自視点のTV番組評とオリジナルイラストが人気のコラムニスト・吉田潮さんに、最終回を迎える『光る君へ』を振り返り、見どころをうかがいました。
いよいよ最終回へ
いよいよ最終回を迎える『光る君へ』(NHK)。戦とお家継承が描かれる戦国武将モノとは異なり、やんごとなき人々の悲劇と憂鬱、残酷無比な権力争い、政の道具にされる女性たちがたっぷりと描かれた。戦禍はなくとも、天災や疫病が続いた平安に、ひとりの女性が物語を紡ぎ、1000年たっても読み継がれる大作を生み出したことに改めて敬意を覚える。そんな大河ドラマだった。魅力的なキャラクターも多数いたが、主人公・まひろ(紫式部)の半生を彩った、いや、通り過ぎていった男たちを振り返ってみよう。
横暴な権力を批判し、民の苦しみを笑いで救う直秀
まずは、散楽の役者だった直秀(毎熊克哉)。町中でまひろ(吉高由里子)や藤原道長(柄本佑)の危機を救い、ふたりの恋路を支えた立役者でもあった。闇夜に屋根の上から報告&フォロー、義賊としても暗躍していた直秀だが、まひろと道長の願いも虚しく、惨殺されてしまう。 直秀がまひろに教えたことは、富と権力を握った貴族たちに虐げられている民の心だ。散楽で貴族を揶揄して、面白おかしく演じるのは、庶民の生活が苦しくて辛いから。どうにもならないからこそ笑って辛さを忘れたいのだと諭す。不公平な格差社会を打破したい。まひろの胸にその志の種を植えたのはシニカルな直秀の本懐だった。 個人的に好きだったのは、直秀が冗談とも本気ともとれるように、まひろを誘ったシーン。「海の向こうにかの国がある。京のお偉方はここが一番とふんぞり返ってるが、所詮鳥かごだ。俺は鳥かごを出て、あの山を越える。一緒に行くか?」と。まひろは「行っちゃおうかな~」と案外即答。直秀は「行かねーよな……」と寂しそうに笑う。まひろの人生の選択肢にはなかったものの、直秀と一緒に京を出ていたらどうなったのだろうと想像させる場面だった。