RIIZE×米津玄師、TWS×ヨルシカ、IVE×あいみょん……K-POPアーティストによる“J-POPカバー”の魅力
国際的に人気を拡大してきたK-POPシーンでは、近年多くのアーティストがJ-POPカバーを披露し話題となっている。そこで本稿では、今年カバーされた作品を振り返りつつ、K-POPアーティストがJ-POPをカバーすることの魅力を掘り下げていく。 【画像】新人からベテランまで勢揃いの『2023 MAMA AWARDS』最終日 直近では11月6日、RIIZEのEUNSEOK(ウンソク)による米津玄師「アイネクライネ」のカバー動画がRIIZE公式YouTubeチャンネルで公開された。屋上のような場所で夜景をバックに撮影されたこの映像では、オリジナル音源と比較すると伴奏の音が絞られ、ギターのシンプルな音色がEUNSEOKの歌声を引き立てる。米津の歌声とEUNSEOKの歌声を同時に聴くとわかりやすいのだが、彼らの声は特に中低音域の響きが似ている。そのためEUNSEOKの歌声はこの楽曲と相性が良く、彼の良さが存分に引き出されているのだと思う。そして、まるで日本語話者が歌っているように自然に聴こえる。たくさん聴き込んだことが想像できるだけでなく、もともとの耳の良さを感じずにはいられない、見事な再現度だ。 RIIZEのSOHEE(ソヒ)は、今年8月に優里「ドライフラワー」のカバー動画をアップロード。これほど短く感じる1分40秒があるのかと思うほど聴き入ってしまう歌声は、楽器のような鳴りの良さで音を紡いでいく。彼もまた、オリジナルの音源とよく似た声質――上手いだけではなく、人を惹きつけて離さない歌声を持ち、感情の立体的な乗せ方の上手さを失恋ソングにしっかりと映し出している。画面越しのSOHEEは、片手にマイク、片手にスマホを持って椅子に腰掛け、スマホに目を向けながら歌っているだけなのに、彼がこちらに視線を寄越すことは一度もないのに、なぜこんなにも見入ってしまうのだろう。 TWSのYOUNGJAE(ヨンジェ)がカバーしたヨルシカ「左右盲」でまず驚いたのは、「つ」の発音の正確さだ。通常、韓国語に存在しない「つ」を発音することは非常に難しく、「ちゅ」と発音してしまうことが多い。存在しない発音なのだから、むしろそれが当たり前である。しかし、YOUNGJAEは〈突いている〉〈一つでいい〉〈剣〉〈僕の靴跡を〉と、どのワードにおいても見事に「つ」の音を発音し、ネイティブ同様に日本語の歌詞を歌い上げているのだ。彼は今年1月のデビューショーケースでもすでに新人とは思えない流暢な日本語の挨拶を披露していたのだが(※1)、きっとこの1年間で一層の努力を重ねたのだろう。セットや小道具もこだわり抜かれ、青春の風景を彷彿とさせるストーリー仕立ての映像とともに、YOUNGJAEのやさしく柔らかな歌声で丁寧に紡がれた言葉を聴けば、何も語らなくてもヨルシカへのリスペクトをしっかりと感じられる、そんな作品だ。