「ドル円」は当面もみ合い推移が続くものの、緩やかに上昇すると予想 ~マーケットの振り返りと見通し【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフリサーチストラテジスト】
5.企業業績と株式
<現状> ●ファクトセット(FactSet)によれば、日米の企業業績は過去最高水準を更新しており、好調を維持しています。5月末の米S&P500種指数の予想1株当たり純利益(EPS)は前年同月比+11.3%、TOPIXの予想EPSは同+18.0%と、いずれも2桁の伸びとなりました。 ●米国株式市場は、FRBの利下げ観測が再び高まったことや、主要半導体銘柄の決算が市場予想を大きく上回ったことを好感して、月半ばに最高値を更新しました。NYダウは前月比+2.3%、S&P500種指数は同+4.8%の上昇となりました。 ●日本株式市場は、欧米の株式市場が最高値を更新したものの、国内企業の決算で示された慎重な24年度業績見通しや長期金利の上昇が重石となり、やや上値の重い展開となりました。日経平均株価は前月比+0.2%、TOPIXは同+1.1%と、小幅の上昇となりました。 <見通し> ●米国株式市場は、インフレの下げ渋りがみられるなかでも、米景気のソフトランディングを前提とした適温相場が続くとみています。FRBによる利下げが先送りされる可能性や、大統領選挙、地政学リスクの不透明感などから変動性が高まる局面が想定されるものの、米景気のソフトランディングに伴い企業業績の拡大が見込まれることから、米国株式市場は緩やかにレンジを切り上げる展開を予想しています。 ●日本株式市場は、日本の名目GDP成長や製造業における景気循環の底打ちに伴う企業業績の拡大を背景に上昇すると予想します。日銀の政策変更に伴い長期金利は上昇傾向にあるものの、業績相場が続くことで下値は限られそうです。コーポレート・ガバナンス(企業統治)改革進展への期待に加え、自社株買いや新NISA(少額投資非課税制度)の資金流入など良好な株式需給も相場上昇を支えるとみています。
6.為替
<現状> ●円の対米ドルレートは、月初に円買い介入とみられる動きで大きく上昇しましたが、その後は弱含みました。FRBによる利下げ観測が再び強まり、米長期金利が低下した一方、日本の長期金利が上昇し、日米金利差が縮小したものの、円買いの動きは強まらず、前月とほぼ横ばいで終了しました。 ●円の対ユーロレートは、低金利の円を売る動きが続き、170円台に下落しました、ユーロは対ドルでも上昇しました。 ●円の対豪ドルレートは、米利下げ期待の再浮上で投資家のリスク選好姿勢が高まり、資源国通貨の豪ドルが買われたため、下落しました。 <見通し> ●円の対米ドルレートは、当面はもみ合い推移が続くものの、米金利の低下に伴い、緩やかに上昇すると想定します。先行きはFRBの利下げ開始と日銀の利上げによる日米金利差縮小が円の上昇要因となるとみています。ただし、日銀は連続的な利上げを急がず、円の上昇余地は限られそうです。 ●円の対ユーロレートは、当面レンジ内でもみ合うものの、先行きはECBによる利下げと日銀の利上げが意識され、緩やかに上昇するとみています。 ●円の対豪ドルレートは、当面レンジ内でもみ合うものの、先行きは豪州中銀の利下げと日銀の利上げが意識され、緩やかに上昇するとみています。
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