「IUS(ミレーナ)」って何?生理がラクになる?効果、費用、装着方法を産婦人科医が解説!
つらい生理痛が楽になると噂の「IUS(以下一般名称:ミレーナ)」。「避妊リング」「子宮内避妊具」などさまざまな呼び名があるけれど一体どういうもの? まずはキホンの「キ」から、産婦人科医の稲葉可奈子先生に教えていただきました。 【写真】生理用品、膣ケアコスメほか人気のフェムテックアイテム
Q1.「ミレーナ」とは? A1.過多月経の治療や避妊を目的として、子宮に入れて使う医療器具です。 稲葉先生:アイテムとしては、3センチ程度のT字型をしていて、柔らかいプラスチックでできています。正式名称は「黄体ホルモン放出型子宮内システム(LNG-IUS)」といいます(「ミレーナ」は商品名)。 2014年に保険適用となり、生理の血が多すぎる「過多月経」や、生理中の体調不良の総称である「月経困難症」の治療として利用できるようになりました。 ミレーナのように子宮内に挿入するタイプの避妊具は以前から存在し、初期のものは輪っか状だったので「避妊リング」と呼ばれていたのですが、現在はミレーナのような形状が主流であるほか、使用目的が生理に伴う症状への治療にまで広がったことから、「避妊リング」という名称はもうあまり使われていません。 Q2.ミレーナをつける効果は? A2.経血量を減らして生理痛を軽減できるほか、高い避妊効果もあります。 稲葉先生:まず、女性ホルモンには「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」という2種類があります。ミレーナの表面にはこのプロゲステロン製剤がコーティングされていて、じわじわと子宮内に吸収される画期的な仕組みになっています。それにより、子宮内膜が厚くなるのを抑え、経血量が減り、月経痛も軽くなります。また、受精卵の着床を防げる避妊効果もあります。 低用量ピルなど、ホルモン剤の飲み薬そのものは割と知られていますが、飲み忘れてしまう可能性があります。その点、ミレーナは一度入れれば最長で5年間も効果が続くので、自己管理が不要です。また、効果も局所的なので、生理時の腹痛や経血量の多さを改善しつつ子宮以外の部分には影響を及ぼしません。 Q3.ミレーナの費用はどのくらい? A3.保険適用であれば1万円程度です。 稲葉先生:自費診療(避妊のためなど、治療目的ではない)だと、クリニックによりけりですが、5~7万円が目安です。一方、婦人科で月経困難症の診断をうけて保険適用となれば、自己負担額は1万円程度。ミレーナは一度の施術で5年間効果がありますので、長期的に見ればお財布にも優しいという利点があります。経過観察は必要ですが、ピルの処方よりは受診頻度も少なくすみます。 保険適用の対象となる過多月経や月経困難症の診断に関しては、厳密に経血量を測ったり血液検査をするわけではなく、「こんなふうに困っている」という自己申告で大丈夫です。 ミレーナを検討中の方は、まずはお困りの症状で婦人科を受診し、その際に「ミレーナにも興味があるんですが......」というふうに聞いてみるのが良いと思います。 Q4.ミレーナの装着方法は? A4.子宮内に入れるだけ。数分で完了します 稲葉先生:ミレーナは、装着前はI字型をしています。細長い専用の器具で子宮内に挿入し、T字型に開きます。よく見る子宮のイラストだと、子宮内には何やら広い空間があるように見えると思うのですが、実際の子宮は平たく、かなり小さな臓器なんです。なので、ミレーナをIからTへ変形させるだけで子宮内に引っかかり、よほどのことがなければ抜け落ちてしまうことはありません。装着自体はとっても簡単で、施術も数分で終わります。 ミレーナは子宮内膜が薄い状態で入れるのがベストなので、生理が来て、もうすぐ終わるなという終わりかけのタイミングで施術をします。 Q5.ミレーナを入れるのは痛い? A5.基本的には麻酔も手術も必要ありません。 稲葉先生:痛みの感じ方には個人差がありますので一概には言えませんが、我慢できないほど激しい痛みを伴うことはごく稀です。装着時の痛みは子宮口の狭さ次第なので、出産経験がある方の方が器具が通りやすく、比較的痛みは少ないです。どうしてもという場合には麻酔を選択できるところもあるようですが、麻酔に関しては自費診療になってしまうので、費用の負担が大きくなってしまいます。 Q6.ミレーナにデメリットはある? A6.治療法としてはメリット多数。必要かどうか、まずは産婦人科へ相談を。 稲葉先生:手術の必要がなく簡単に入れることができる、抜こうと思えばいつでも抜くこともできる、日々のメンテナンスは不要......などなど、毎月の生理がしんどいという方が気軽に選択できる治療方法として、メリットは大きいです。強いてデメリットを挙げるならば、入れた直後にしばらく少量出血が続く、ということくらいでしょうか。 ただ、生理痛の緩和にもいろいろな方法がありますので、例えば「子宮内に異物を入れるのが怖い」「飲み薬の服用が苦じゃない」という方が、無理をして入れる必要はまったくありません。 また、ミレーナの効果はあくまでも子宮内に留まりますので、例えば卵巣にチョコレート嚢胞があるなど、婦人科系であっても子宮外で起きている症状や病気へのアプローチにはなり得ません。 毎月の生理に何らかの悩みを抱えていたり、今、特に妊娠を望んでいる状態でない女性にはおすすめできるものですので、お気軽に産婦人科へ相談してください。 お話を伺ったのは...... 産婦人科医 稲葉 可奈子(いなば かなこ)先生 ●産婦人科専門医・医学博士。京都大学医学部卒業、東京大学大学院博士課程修了。東京大学医学部附属病院、三井記念病院、関東中央病院などを経て、2024年7月、東急プラザ渋谷内に「Inaba Clinic」(東京都渋谷区)を開業。産婦人科診療の傍ら、メディアや公演、SNSなどを通して、生きていく上で必要な知識や正確な医療情報の発信を行う。著書に『シン・働き方 ~女性活躍の処方箋~』(きずな出版)など。私生活では、双子含む四児の母。 みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト 代表 みんリプ!みんなで知ろうSRHR 共同代表 メディカル・フェムテック・コンソーシアム 副理事長 Live News α・Yahoo!・NewsPicks公式コメンテーター 構成・取材・文/月島華子