刑務所前で“週6日出待ち”する男性「家族からも見放され居場所がない」 出所後の困難、再犯防ぐカギは
TSUNAGUを立ち上げた背景には、松浦氏自身が「元受刑者」だったことがある。「出所してからの5年半で、いろんな誘惑があり、迷うことも多々あった。その中で踏みとどまれたのは、自分には帰る場所や、支えてくれる家族や仲間がいたから。大切なものがここ数年で増えた」。出所後に勤めた会社から独立し、時間や金銭面で余裕が出てきて、「次は支える側の活動をしたい。漠然すぎて何も考えていなかったなかで、自社スタッフの兄が近い活動をしていて、取り組みのヒントを得た」そうだ。 経営はどう成り立たせているのか。「出所直後の人は、基本的にはお金も身分証明書もない。そういう人が家を借りるには、協力してくれるオーナーが必要だが、オーナーは『TSUNAGUが保証してくれるなら入居を認める』と条件を付ける。大阪市では生活保護の住宅補助が4万円まで出る。オーナーと家賃を下げる交渉をして、4万円で賃貸物件をサブリースすることで、その差額を」と説明。 公的制度を活用しているため「支援する人の生活費から、お金をもらうわけではない」のが特徴だ。しかし、同様の仕組みを行政に求めても、「そこまで柔軟に対応するのは難しい。オーナーからしても、何度も犯罪歴のある人を受け入れることには抵抗がある。泥臭い交渉を行政がしていけるのか」と語る。
■3度の逮捕の末TSUNAGUと出会った男性「寄り添ってくれる安心感」
山下さん(仮名・29)は、TSUNAGUの支援を受けて、職を得た。21歳の時に飲酒運転で逮捕・収監(懲役1年4カ月)。その後、26歳と28歳の時に、窃盗で逮捕・収監され、それぞれ懲役4カ月と8カ月に。2023年12月に出所し、刑務所前でTSUNAGUのスタッフと出会った。2024年1月からアルバイトを始め、5月からは正社員として働いている。 「支援していただいて、いまの生活がある」と語る山下さん。「(出所直後に)話しかけられて最初は断ったが、たまたまもう一度会って、興味がわいてきた。『次の日、会いましょう』と、すぐに生活保護の支援もしてくれて、『そこまでしてくれるのか』と感じた」と明かす。 TSUNAGUはどのような存在なのか。「寄り添ってくれる人がいないなか、支援してくれる安心感がある。刑務所の中では存在を知らず、保護観察所で『保護カード』を渡されても、どこへ行けばいいかわからなかった。こういう活動は、刑務所とも連携しつつ、今後もっとやっていくべきだ」。 出所者を支援しても、再犯する可能性は拭えない。ただ、「TSUNAGUが支援している約50人のうち、再犯者は3人のみ。国の統計より再犯率を下げている」と、松浦氏は語る。「必要なのは『物理的に住む場所』よりも、『心のより所』。自分たちが見守り続けるのは、『家を用意したら終わり』となると、きっと再犯してしまうから。見守りを重ねて、いつまでもつながっていたい」。(『ABEMA Prime』より)