『ブルー きみは大丈夫』ジョン・クラシンスキー監督 大人を虜にするための鍵はノスタルジー【Director’s Interview Vol.411】
トトロというより、抱きしめてくれそうなキャラの意識
Q:あなたは劇中でビーの父親役も演じています。共演相手としてケイリーの名演技を引き出したのでは? クラシンスキー:これまで多くの子役と一緒に仕事をした経験から、彼らから最高のパフォーマンスを引き出す最善策は「ありのまま」で演じさせることだと学びました。僕ら大人が何かを指導し、押し付けるのではなく、一緒に探り合うプロセスが理想ですね。そのうえで今回は、ケイリーと僕の父娘シーンを、あえて撮影の終盤にスケジューリングしました。僕が監督として彼女を演出し、その空気に十分に慣れた時期に共演すれば、より親近感がもたらされると信じたからです。ある重要なシーンで、僕は目の前にいるケイリーの演技に感動し、不覚にも涙を流してしまいました。その表情は幸いにもカメラには映っていませんが、それくらい彼女はすべての出演シーンを完璧にこなしたのだと思います。 Q:IFのキャラクターであるブルーについて、日本の観客には「トトロ」を連想する人も多いと思われます。もしかしてヒントになったとか? クラシンスキー:多くのインスパイアを受けた作品の中に、たしかに『となりのトトロ』(88)も含まれています。ただしキャラクターデザインに関して、トトロの影響はありません。児童心理学の専門家を通し、子供たちの空想上の友達を研究するうち、たとえば学校でいじめられた時に抱きしめてくれる大きな存在が“ありがち”だとわかり、ブルーのキャラクターが生まれました。これに関しては娘たちとのエピソードがあり、以前に彼女たちから「パパの好きな色は?」と聞かれ、「ブルー」と答えたら、「違う、紫でしょう?」と諭されたんです。そのやりとりに洗脳されたせいか僕の好きな色は紫に変わりました。そこから名前はブルーで、色は紫のキャラクターが生まれ、映画の中にもその経緯を取り入れたのです。 Q:「となりのトトロ」以外に、スタジオジブリ作品との縁もありますよね? クラシンスキー:そう! 『風立ちぬ』(13)で本庄役の声を担当しました。ジブリ作品に参加できたことは、とても幸運で光栄でしたよ。 Q:本作が大人の観客も魅了する要因として、ノスタルジーを刺激する演出があちこちに用意されている点が挙げられます。そこはもちろん意識しているのですよね? クラシンスキー:それこそ僕が本作で最も意識した点です。子供向けであり、なおかつ大人向けの映画を作りたかったからです。目標としたのは、僕自身が子供時代に観て、ちょっと次元の違う感動を与えてくれた映画。たとえば『E.T.』(82)や『グーニーズ』(85)は、友情ドラマの部分だけでなく、人間にとって愛する対象すべてが関わってきます。親の離婚といった子供にとっての思わぬ経験、大人の事情も描いていて、子供向けの映画の枠に収まらない。ジブリ作品なども、僕らが想像できないレベルで子供たちに大きなテーマを届けています。ノスタルジーという意味では、本作では蓄音機とレコードをリンクさせるなど、作品全体にあらゆる時代と結びつく様々なキーアイテムや表現を“仕掛け”のように揃えました。それによって、各世代が懐かしさに浸ることができると思ったのです。
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