梅田の新阪急ホテル、60年で幕…お見合いから大統領の食事会まで「思い出がたくさん」「閉館寂しい」
大阪・梅田で旅行やビジネスの拠点として親しまれた大阪新阪急ホテル(大阪市北区)が来年1月4日、60年の歴史に幕を下ろす。周辺の再開発に伴い、建て替えられる予定だ。結婚式など人生の節目で利用した客も多く、別れを惜しむファンが連日足を運んでいる。(社会部 飯田拓) 【写真】開業当時の新阪急ホテルの外観
「関西一のビジネスホテル」
「ビジネスの待ち合わせ、お見合い、家族での食事など約50年を過ごさせていただきました」「ずーっとあった梅田の風景の一部。さびしいです」。ホテルの1階ロビーには歴史を写真や年表で振り返るコーナーが設けられ、メッセージボードには様々な思い出が書き込まれている。
東海道新幹線開通や東京五輪開幕の約2か月前だった1964年8月、「関西一のビジネスホテル」と銘打ち、開業した。当時は周辺に大規模なホテルはあまりなく、阪急梅田(現・大阪梅田)駅近くに623の客室を備え、高度経済成長期の街の宿泊需要に応えた。79~83年にはフォード、カーター両元米大統領が訪れ、食事会が開かれた。
結婚式場としても人気を博し、70年代には約1300件の披露宴が行われた年もあった。11月上旬に同窓会などのために宿泊した札幌市手稲区の奥山哲朗さん(65)は「約40年前に姉や妹が結婚式を挙げたのがこのホテル。家族旅行や帰省の際もお世話になり、亡くなった妻もファンだった。思い出がたくさんあり、閉館は寂しい」と語った。
当時の大阪では珍しかったバイキング形式のレストラン「オリンピア」も海賊船をイメージした料理用テーブルなどで話題を集めた。
友人と訪れた堺市南区の主婦石浜英子さん(62)は「子どもの頃、『おいしいものがいっぱい。宝箱みたい』とわくわくしたのが懐かしい。閉まると知ってもう一度来ると決めていた」と話した。パティシエとして勤めてきた橋本義一さん(56)は「料理の質はもちろん、お客さんの思い出に残るために知恵を絞った」と振り返る。
ただ、コロナ禍で休業を余儀なくされ、近年は配管や空調設備などの老朽化が目立つようになっていた。