「1000京ドルの価値」を持つ金属小惑星プシケの表面に水が存在か
小惑星プシケ(16 Psyche)の表面で、含水鉱物を検出したとする、NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による観測結果が発表された。金属質のプシケは、天文学者の間で知られている最も興味深く、最も価値の高い可能性のある小惑星の1つで、NASAは2023年10月にプシケを目指す探査機サイキを打ち上げた。 【画像】小惑星プシケを構成する金属は、約1000京ドルの価値がある可能性があるという 火星と木星の間にある小惑星帯で最も明るい天体の1つであるプシケで、水酸基(OH)分子が見つかったことは、科学者の予想とは異なる、複雑な歴史を持っていることを示唆している。水酸基分子は、1つの酸素原子と1つの水素原子からなる。 プシケを構成する金属は、約1000京ドル(1京は1兆の1万倍)の価値がある可能性があるといわれている。データ分析サイトのビジュアルキャピタリストによると、世界経済の国内総生産(GDP)は2023年末に約105兆ドル(約1京5100兆円)に達した。だが、NASAも他の宇宙機関も現在のところ、プシケを採掘する方法の研究は進めていない。 ■破壊的な衝突 プシケは、原始惑星が惑星になる前に破壊的な衝突を経験し、金属の核の部分が露出した状態にあるものと、科学者はこれまで考えていた。だが、今回の発見によって、太陽系の「スノーライン」の向こう側で形成され、小惑星帯に移動してきた小惑星の可能性も浮上することになるかもしれない。スノーラインは、惑星系の中心星(太陽)から離れるほど低くなる温度が、水が固体の氷になるほど低温になる境界までの、太陽からの最短距離のことだ。 今回の発見は、NASAの探査機サイキが到着する2029年以降にプシケで何が見つかるかだけでなく、太陽系全体で水がどのように分布しているか、ひいては地球外生命の探索に対しても、示唆を与えている。 ■露出した核 JWSTの赤外線観測機能を利用した今回の研究は、M型と呼ばれるプシケのような小惑星がどのような天体かに関して疑問を投げかけている。科学誌Planetary Science Journalに23日付で掲載された、今回の研究をまとめた論文の筆頭執筆者で、米ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのステファニー・ジャーマックは「太陽系の進化に関する理解は、小惑星の組成、特に他より高密度の金属を含むM型小惑星の組成の解釈と密接に関連している」と説明する。「M型小惑星は、分化した微惑星の中心核が露出したものと当初は考えられていた。これは、鉄隕石とのスペクトルの類似性に基づく仮説だ」