「留学生や児童養護施設出身者、ひとり親や親がいない子も…」10年で36人の母になったシンガーソングライター・玉城ちはるがホストマザーを始めたわけ
── たしかに、文化の違いを知るのは大事ですね。 玉城さん:留学生だけでなく日本人とも共同生活していましたが、そういう部分では日本人同士のほうが大変でした。「同じ日本人だからわかるでしょ?」となるからです。留学生とは見た目も言葉も宗教も歴史も違うから素直に「教えてほしい」と言うことができます。でも、日本人は「当然、言わなくてもわかるだろう」って思ってしまう。そんな気持ちでやっていたらケンカになるんです。「なんで普通がわからないの?」「大人だからわかるよね」って。日本人同士でも常識や考え方は違いますから、同じ日本人同士だからこそもめるんです。
当時は「なんで私はわかってあげられないんだろう」と悩むこともありましたが、ここで初めて「実は私たちは『違う』のに『同じだ』と思っていることに生きづらさを抱えているんだ」と知りました。日本人同士でも、たとえ親子であっても価値観が違うんだって。 私は結婚し、今は小学校3年の息子と3歳の娘の母です。長男が3歳のときにADHDグレーゾーンと言われたのですが、この当時の経験があるから息子と話し合いができるように思います。自分の子どもだからわかるだろうと思うけど、思ってもみないことをするんですよ。このことで発達障害を持っているお子さんをお持ちの親御さんは悩むけれど、私たちとは見え方が違うんですよね。そもそも子どもが違う視点で見ていることがけっこうあって。わかっているつもりにならず、どんなに小さい子でも「なんでこう思うの?」とちゃんと話し合うのはとても大事だなと思います。
── 送り出した留学生たちも成長し、お子さんが生まれた方も。ホストマザー・玉城さんの「孫」がすでに6人もいるそうですね。現在も交流はありますか? 玉城さん:はい。日本人はいまだに会いに来てくれますし、海外の子も連絡を取ったりしています。7年以上、共同生活した香港の男の子は「僕に妹と弟をありがとう」とたずねて来るたびに子どもたちをかわいがってくれます。親になったり、各国での活躍を聞くと本当にうれしいですね。みんな優秀で、今はマレーシアにいたりシンガポールと香港を行き来していたり、ドバイにいたりと活躍しています。日本で何か災害が起こると、恩返しだと募金してくれたりもするんですよ。