「留学生や児童養護施設出身者、ひとり親や親がいない子も…」10年で36人の母になったシンガーソングライター・玉城ちはるがホストマザーを始めたわけ
── 人数が増えていくことで大変だったことはありますか? 玉城さん:光熱費が上がることは避けられませんでした(笑)。なので私も電気や水道のムダ使いしている子を見ると注意しましたよ。掃除当番とかも、ちゃんとしない子がいたりするんですけど、私は嫌われたくなくて代わりにやってあげてしまったりすると、ちゃんと守ってやっている子が「あなたがやったらダメでしょ!私は真面目にやってるんだからちゃんとリーダーとしてダメなことはダメと言いなさい!」と怒られたり。リーダーとしての素質も自然と養われていきました(笑)。
生活習慣だけでなく宗教の違いでもめることも多く、一つひとつ丁寧に話し合いました。「あなたの国の文化を知っているわけじゃないからあなたを不快にさせるつもりはなかったけど、何を怒っているの?」と教えてもらう。「私たちはその文化を知りませんでした。これから学んでいくから怒らないでね」と、お互い議論を交わしながら相互理解していきました。
■自分の価値観が正しいかどうかを疑うこと ── 文化の違いを知らないと、誤解を招く恐れがありますね。
玉城さん:そうなんです。中国人の男の子との印象的なエピソードがあります。毎日ご飯を作っても彼が少しだけ食べ残すんですよ。口に合わないのかと試行錯誤して、わざわざ中華街まで食材を買いに走ったこともあります。一生懸命作っても、彼はどうしても残すわけです。私たち日本人は幼いころから「ご飯は感謝して食べなさい、残すのは失礼」と言われてきましたよね。作り手のことを考えて食べろという教育を受けて、その価値観で育つので、どうしてもそれが受け入れられなくて。
もったいないから彼の食べ残しを食べたら「なんで食べ残しを食べるんだ!汚い!」と彼が怒ったんです。そう言われてさらにショックを受けて泣きながら「なんてことを言うの」と怒鳴ったんですよ。そしたら中国には200以上の民族があり文化もさまざまで、全部食べきってしまうと「あなたのおもてなしが不十分で、用意した料理の量が少ない」ということになるから、感謝を伝える意味で食べ残しているんだとわかったんです。 一方的に責めたけど違ったなと。そのとき自分が受けた教育や価値観が「絶対に正しい!」と、私は泣きながら人を責める人間なんだな、と知りました。これはちゃんと話し合わないといけないと思いましたし、自分の価値観が正しいかどうかを疑うことを学びました。自分が絶対に正しいということは100%ではないんじゃないか、相手には相手の正義があるんだということに気づきましたね。