公的年金受給者でも確定申告する必要はありますか? また、不要であっても確定申告したほうがよいケースはありますか?
いざ、年金受給が始まった際に、「果たして自分は確定申告する必要があるのだろうか」と迷う人もいるかもしれません。例えば、会社員として定年まで勤めあげ、これまでに確定申告を一度もしたことがない人もいることでしょう。 本記事では、公的年金受給者の確定申告の要否と、確定申告すると所得税の還付を受けられるケースなどについて解説していきます。
原則、確定申告は必要。ただし「確定申告不要制度」がある。
公的年金等の収入は、所得税の「雑所得」に分類され、課税対象となります。公的年金等に係る雑所得の計算には、それ以外の雑所得とは異なり、「公的年金等控除額」を適用することができます。つまり、所得税等の課税対象として、原則、確定申告が必要となります。 ただし、多くの人が「確定申告不要制度」の適用対象者となるため、確定申告する必要はありません。この制度は、年金受給者の確定申告手続きの負担を軽減することを目的として設けられた制度です。制度利用のために特別な手続きは必要ありません。
確定申告不要制度の適用対象者
確定申告不要制度の対象者は、以下2つのいずれにも該当する人です。 (1)公的年金等の収入金額の合計金額が400万円以下であり、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる。 (2)公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である。 (1)の収入金額は、毎年1月頃に日本年金機構から送付される「公的年金等の源泉徴収票」などで確認することができます。単純計算でおおむね月額33万円程度となります。なお、源泉徴収の対象となる人は、65歳未満で年金収入額が108万円以上の人、65歳以上で158万円以上の人です。 (2)の「公的年金等に係る雑所得以外の所得」は、例えば、給与所得、個人年金などの雑所得、株式の配当などの配当所得、生命保険の満期返戻金などの一時所得等が想定されます。
確定申告したほうがよいケース
たとえ上記の2つの要件を満たし、確定申告不要制度の対象者である場合でも、確定申告することで納め過ぎた税金の還付を受けられるケースがあります。 (1)「公的年金の受給者の扶養親族等申告書」に記載の扶養親族等に変化が生じたケース 扶養親族等が増加した場合や障害者となった場合などで、所得控除の控除額が多くなる場合があります。また、配偶者との死別、離婚などで寡婦控除(場合によってはひとり親控除)に該当する場合もあります。 (2)特定の所得控除や税額控除を受けるケース 例えば、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の税額控除の適用を受ける、医療費控除や雑損控除の適用を受ける、ふるさと納税について寄付金控除の適用を受ける場合などで、確定申告が必要となるケースが想定されます。 (3)扶養親族等申告書を提出していないケース 公的年金等の源泉徴収の対象となる人には「公的年金の受給者の扶養親族等申告書」が届きます。これを提出することで、配偶者控除などの各種控除を受けることができます。 つまり「提出していないと税金を納め過ぎている場合があるため、確定申告することで納め過ぎた所得税等が還付される」というケースが想定されます。