選択的夫婦別姓も同性婚の法制化も進まない 「結婚」という社会制度は「そろそろ時代に合わなくなってきている」
選択的夫婦別姓制度は導入されず、同性婚も法制化されていない日本の「結婚」。旧態依然とした「結婚」に背を向けて、新しい関係性を模索する動きも出ている。AERA 2024年5月27日号より。 【図を見る】50歳時未婚率の推移はこちら * * * 選択的夫婦別姓だけではない。同性婚の法制化も進まない。 LGBTQが子どもを持つ未来を当たり前に選択できる、そんな社会を目指して活動している一般社団法人「こどまっぷ」の代表理事・長村さと子さんも現状に「怒りを通り越して、呆れを感じる」と話す。 「今月、同性パートナーと同じ名字への変更を求める審判を申し立てていた男性が、名古屋家裁から『二人は夫婦と同様の、婚姻に準じる関係だ』として変更を許可されたという報道がありましたが、私の友人は同様の申し立てで家裁に『必要性を感じない』と却下されました。その必要性を他人に判断されるなど、あからさまな差別です。私たちが求めているのはシンプルに『結婚さえできれば』という話。同性婚が認められていれば、真逆の判決が出るなどややこしいことにもなりません。現実に法律が追いついてこない虚しさも感じます」 長村さん自身は知人男性からの精子提供で子どもを授かり、同性のパートナーと育てている。LGBTQのカップルには地方自治体が「結婚に相当する関係」とする証明書を発行し、サービスなどを受けやすくする「パートナーシップ制度」があり、2015年の東京都渋谷区に始まり今では300を超える自治体で施行されているが、長村さんは地元・東京都足立区におけるパートナーシップ第1号でもある。しかし、パートナーシップ制度には法的効果はない。長村さんは「地方自治体ができる限りのことをやっている制度」と評価しつつ、同性婚が法的に認められないことについて「政治の怠慢だ」と話す。
「法律を変えるためにはまず同性婚への『理解』が必要だとよく言います。でも国民の理解のための説明などなく変わっていく法律、たくさんありますよね。まず法的に認められれば、そこから同性婚への理解は広がるはずです。求めているのは平等。そこを踏まえた上で変えるべきことは変えるアクションを取るのが政治の役割だと思います」 性のあり方に関わらず、誰もが結婚するかしないかを自由に選択できる社会の実現を目指して活動する「公益社団法人マリッジ・フォー・オール・ジャパン(結婚の自由をすべての人に)」代表で、同性婚訴訟東京弁護団共同代表でもある寺原真希子さんも、地方自治体によるパートナーシップ制度の意義について、高く評価する。 「パートナーシップ宣誓の証明書等があれば二人が家族であると認めてくれるケースもあるなど、その関係性を示す補強材料になりうることや、地方の小さな自治体でも制度が導入されていることで全国各地に性的マイノリティーの方たちが暮らしていることが可視化されたことに、大きな意義があると思います。ただ、結婚と同じような法的効果は残念ながらないので、『パートナーシップ制度があるから同性婚は認めなくていい』ということにはなりません」 最近では同性カップルだけではなく、異性の事実婚カップルもパートナーシップ制度の対象に含める自治体も出てきているという。 「フランスでは『PACS(パクス/連帯市民協約)』という、性別に関係なく、成年に達した二人の個人の間で安定した持続的な共同生活を営むために交わされる契約の形があります。パクスにはある程度の法的な保護があり、カップルのあり方の一つとなっていますが、その前提として結婚制度が同性同士にも開放されています。日本でも結婚以外の選択肢を用意することは考えられますが、まずは現在の結婚制度を異性同士に限らず同性同士でも利用できるようにすることが切実に求められています」