自動車レースはゴルフのように男女別にすべきか。“変革期”の今だからこそ聞く、女性モータースポーツ界の目的地
■女性限定カテゴリーは女性の可能性を広げる
では、実際にKYOJOを戦う女性ドライバーたちの意見はどうか? 3月にシティサーキット東京ベイで実施された『FIA ガールズ・オン・トラック』のトークショーに参加した翁⻑実希、バートンハナ、織戸茉彩に聞いた。 2022年のKYOJO CUPチャンピオンでもある翁長は、幼少期から男性に交じってレースを戦ってきた立場。男女の性差を考えれば男女別で分けるべきだという考えもありつつも、男女一緒に戦えるからこその魅力も肌で感じているため、一概にどちらの方が良いとは断言できないと話した。ただ少なくとも、「女性の中で一番」を目指せる環境があることは個人的にありがたく感じているという。 「モータースポーツと“スポーツ”という名が付いている以上、やはり身体の作りが違う男女ではパフォーマンスにも必ず差が出てくると思います」と翁長は言う。 「ですから、スポーツとしてその差を平等にして競技をするのであれば、男女で分ける必要があると思っていますが、今まで男性の中に交じってモータースポーツをさせていただいてきた中で、それがひとつの魅力でもあると感じているので、私は今の段階では一概にハッキリとしたことは言えません」 「ただ、KYOJOやF1アカデミーといったカテゴリーがあるからこそ、女性で一番を目指す子たちが増えてくると思います。こうやって女性と男性で分けてくれて、女性の中で一番を目指せる環境になったのは、私自身すごく嬉しく思っています」 女性限定のカテゴリーが生まれたことは、翁長のような男性と共に戦ってきたドライバーに「女性で一番になる」という新たなマイルストーンを提供しただけでなく、バートンや織戸のような最近までレース活動をしていなかった女性に「レーシングドライバーになる」という新たな選択肢を提供することに繋がった。これは業界にとって非常に重要なことだとバートンは言う。 「今、女性だけのシリーズが非常に重要だと思っているのは、これまで女性が『モータースポーツは参加するものだ』ということを知る機会がなかったからです」 「だから若い女の子たちはレーシングドライバーになろうとしなかったのです。しかし今はF1アカデミーやKYOJOのドライバーになることを彼女たちは夢見るようになりました。だからそういうシリーズがあれば女性の可能性はもっと広がると思います」 またバートンは、男性と女性の競技人口がイコールに近付けば、パフォーマンス面でも差は縮まるのではないかと述べた。 「多くの女性がドライバーを目指すようになれば、トップレベルに行く女性も増えるでしょう。今は男性よりも女性の方が少ないので、男性の方がトップに行く……でもそれがイコールになれば、大きな差はないと思うし、パフォーマンスの面でもそれほど差はなくなると思っています」