「ロービーム車検」になると多くのトラックが落ちるってマジ!? ロービーム検査の導入が伸び伸びになっている背景
ロービームが検査の対象に
夜間走行の際に、なくてはならないのがヘッドライト。2灯あるいは4灯が、左右対称に一対で装備されている。周知のとおり、ヘッドライトにはロービーム(すれ違い用前照灯)とハイビーム(走行用前照灯)が存在する。大半のドライバーは、通常はロービームで走ることが多い。ハイビームは街灯がなく、クルマがほとんど通らないような場所で使用するのが一般的だ。 【写真】デコトラの鉄板装備! 光るホイールの仕組みとは ところが、道路交通法・保安基準の解釈は少し違う。法律ではロービームをすれ違い用前照灯と表現するように、本来は対向車が来たときに使用するライトなのである。これに対して、ハイビームは走行用前照灯とされているので、通常はこちらがメインのヘッドライトということになる。 とはいえ、街なかでは対向車が多いから、ハイビームで走ればパッシングの洗礼を受けることは間違いない。ロービームを通常走行用のライトだと思うドライバーが多いのも、至極当然のことだといえよう。 こういった法律の規定もあり、以前は車検でも光量、光軸、色などの測定を、ハイビームで行うと決められていたのだ。しかし、2015年にその基準が変更され、1998年9月以降に作られた車両(ロービームを基準にヘッドライトが設計されている車両)は、原則的にロービームが検査の対象となり、2018年から実行に移されたのである。
多くのトラックが車検に通らなくなる!?
ただ、この段階では民間車検工場の準備が整わないことや、ドライバーに対する周知期間が必要ということで、「やむを得ない場合はハイビームで検査が可能」という除外規定が設けられた。その後、十分な準備期間、周知期間を経たとして、2024年8月から完全実施される予定になっていたのである。 それが2024年5月「関東・中部・近畿・四国・九州・沖縄の各地域は、状況を見ながら2026年8月までに順次移行する」ことになった。これは、事実上最大2年延期するということだ。 その理由は「対象車数が多いことやさまざまな事情により、地域によってまだ十分に周知が進んでいないなどの現状を考慮した」ということだそうだ。一方、整備の現場からは「検査機器導入のコストがかかる」「検査技術の習得が進んでいない」といった声があるという。この根底には、「コストや手間をかけても、利益が増えるわけではない」ということもあるらしい。 実際にロービーム車検が導入された場合、多くのトラックが車検にとおらなくなる可能性が生じるといわれている。その理由は、 ・過酷な走行でヘッドライトのレンズが劣化したりくすんだりしている ・車両が古いなどして、ヘッドライト内の反射板が劣化・変形している ・社外品のヘッドライトやハロゲンバルブ・LEDバルブに交換している ・ HID(ディスチャージランプ)の場合、劣化により光量が足りなくなる などといったことだ。また、これらの対策として、 ・ヘッドライトのレンズ部分を磨いておく ・適合したバルブを装着する ・レンズまわりには装飾をしない ・ 事前に予備検査を受けておく などが考えられよう。 2024年8月に独立行政法人・自動車技術総合機構から発表された「前照灯検査(ロービーム計測)の合格割合」によると、同年2~7月の同検査合格率はいずれも9割を超えている。確かに、「多くのトラックが車検不合格」では混乱が発生しかねない。ただ、一部の地域ではすでにロービーム検査が完全実施されており、しばらくは何らかの不具合が発生する可能性がある。当面はロービーム検査の情報に、注意を払っておく必要がありそうだ。
トラック魂編集部