“羊の風よけ”に気をつけて リンクスってなんだ/いまさら聞けない全英オープン(3)
男子ゴルフの世界最高峰といえるメジャートーナメントの2024年最終戦が7月18日(木)に始まります。「全英オープン」は4つのメジャーで唯一、米国でなく英国で行われる試合。いまさら他人に聞けないポイントをおさらいします。 【画像】「全英オープン」日本人選手の"フォーショット"
前回のコーナーまでに、「全英オープン」が151回の歴史で英国内の14のゴルフ場で行われてきたことをおさらいしました。ほぼすべての会場に共通するのが、一般的にリンクス(Links)と呼ばれるタイプのコースであることです。 海辺や河岸の砂地を土壌にするリンクスは、丘陵コースや林間コースに比べると、高低差が少ない平坦なつくり。とくに全英開催コースはどれも地面が硬く、フェアウェイに落ちたボールはどんどん転がって、時には100yd近くラン(距離)を稼いでくれます。背の高い木々にショットを邪魔されたり、人工の大きな池を心配したりする場面も少ないと言えます。 英国リンクスでの最大の敵は自然そのものと言えるでしょう。上空をひっきりなしに吹き抜ける強風、突然降りだす激しい雨がゴルファーを襲います。フェアウェイやグリーン周りに茂るススキのような芝はヒザや腰の高さほどに長く刈り揃えられ、ショットがこの危険エリアに入ってしまうと、ボールを見つけるのも一苦労。大きな代償を払うことになります。 最も特徴的なのがポットバンカー。ぽっかり空いた落とし穴のような形状の砂地は、もともと砂丘などで羊と羊飼いの風よけとして掘った穴が起源です。ポットバンカーは深いだけでなく、壁(芝生と砂を重ねてつくられます)は地面から垂直に近い角度でせり上がり、出すことすら難しいケースがあります。
ポットバンカーが生んだ“悲劇”のエピソードとしては、スコットランドのセントアンドリュースにある「トミーズバンカー」が有名です。1978年大会で日本の中嶋常幸選手(トミーはニックネーム)は3日目の17番ホールのバンカーから脱出に4打を要し、このホールを「9」として優勝争いから後退。「Sands of Nakajima」の名称でも知られています。