創業69年の老舗旅館の大浴場をリノベした、フォトジェニックな「温泉喫茶」
コロカルニュース
■創業69年の老舗旅館の大浴場を改装 「老舗旅館の大浴場をカフェにリノベーション」 【写真で見る】外にあった露天風呂は、足湯も兼ねたテラス席に改装。 そんなユニークな取り組みがされたのは、愛知県蒲郡市で、創業69年を迎えた老舗旅館〈銀波荘〉です。1階にあった古い大浴場を改装し、〈温泉喫茶 si no no me〉として再出発。 2024年1月のオープン以来、多くの人が訪れるスポットとなっています。 〈温泉喫茶 si no no me〉の店内に足を踏み入れると、目を引くのは美しいオーシャンビュー。中央にあるアール壁のオープンキッチンがあり、テーブル席のほか、浴槽の腰掛けを活用したユニークな席も設けています。 外にあった露天風呂は、足湯も兼ねたテラス席に改装。足湯に浸かりながら、ゆっくりティータイムを楽しむこともできます。 大浴場時代に使っていた手すりや排水溝も、あえて残しました。ただ単におしゃれなだけではなく、温泉旅館として長く愛された〈銀波荘〉の歴史を体感できる空間にもなっています。 ■地元の味を楽しめるメニューの数々 店内では、クリームソーダやワッフルをはじめとした軽食とスイーツ、ドリンクが多数。なかでも地元の食材を気軽に味わえる、フォトジェニックなメニューに注目です。 「蒲郡クリームソーダ」は蒲郡みかんのパウダーとジャムを使い、さっぱりと仕上げた1杯。ひと口味わうと、蒲郡みかんのさわやかな香りと濃厚な甘さが広がります。 店の前に広がる海や山々を背景に写真撮影をすれば、蒲郡を訪れた記念になる、すてきな1枚となることでしょう。 「西尾抹茶とみかん餡」(1200円)は、抹茶を練り込んだワッフルに、蒲郡の名産品であるみかんでつくった餡をのせ、抹茶ソースをかけた一品です。 抹茶は国内有数の産地である、お隣の西尾市で採れたものです。 ほかにもバラエティ豊かなソフトクリームや、オリジナルブレンドのコーヒーなども用意しています。 ■都内のデザイン事務所と、郊外の温泉旅館との出合い 〈温泉喫茶 si no no me〉を手がけたのは、東京でブランディング・プロデュース事業を行っている〈LON Inc.〉と、日本の伝統と最新技術を組み合わせた商品を制作・展開するプロダクトデザインユニット〈goyemon〉です。 もともと今回のリノベーションは、蒲郡市のお隣・西尾市出身である〈LON Inc.〉の代表・成田さんが、〈銀波荘〉から直接、相談を受けたことがきっかけでした。加えて〈LON Inc.〉と〈goyemon〉の代表たちの世代が近く親交があったこと、〈goyemon〉が過去に宿泊施設のリノベーションと内装を手がけていたことなど複数の要素が重なって、タッグを組むことに。 しかし、アイデアを具体化するまでにはいくつもの困難がありました。 当初、〈銀波荘〉側の希望としてあったのはふたつだけ。「老朽化で壊れてしまった大浴場の跡地にカフェをオープンしたい」「蒲郡や愛知県にはなかなかない、都会的かつ最先端なデザインがいい」このオーダーをどう叶えるかが、悩みどころでした。 「〈銀波荘〉が持つ歴史や大浴場の雰囲気・名残を生かしつつ、都会的なエッセンスを加えた店にしよう」という構想自体は、早くに固まりました。とはいえ、大浴場をカフェにするのは、〈LON Inc.〉と〈goyemon〉のどちらにとっても初めてのこと。「元温泉を、どんな空間にしようか」「この歴史ある場所で、どんなストーリーを紡ごうか」といったことを考える日々が続いたのです。