「発酵」に対して世界で巨額マネーが動き出す理由 ビッグビジネスになりつつある発酵の分野
■「麹」の世界カンファレンス参加者の約75%が海外から さて、「麹」と言えば、「塩麹」など、日本に古くからある味噌や醤油、清酒などの原料というイメージをお持ちの方も多いと思います。 その日本の発酵食品のもとになっている「麹」についてのオンラインカンファレンス「Kojicon」が、アメリカで2021年から開催されています。主催者によると、第1回目の参加者は100人程度の予想であったところ、第1回からその6倍の600人の参加がありました。
私も3回目となる2023年3月に、プレゼンターとして招かれましたが、このカンファレンスの35人のプレゼンターのうち、日本からの参加者はたった4人。その他は、ニューヨーク、ボストンなどのアメリカ国内はもとより、スイスのチューリッヒ、インドのムンバイ、オーストラリアのメルボルンなど、世界各地から参加されている方でした。 「KOJI(麹)」はすでに、ワールドワイドな単語になっており、日本人がいなくても、世界中の人の間でどんどん議論が進んでいます。「麹」のことなら日本に圧倒的なアドバンテージがあるとはいえず、むしろカンファレンスでは日本人の存在感はほとんどありませんでした。
2019年、「北米酒造組合」という組合が誕生しました。この組合には、北米地区でSAKE(現在、「日本酒」は日本国産の米を用いて、日本国内で生産された清酒に使う用語とされているため、海外で生産される清酒は「SAKE」と表記します)を生産する生産者はもちろん、米農家や、関連会社も加入しています。なかでも注目は、SAKEを生産する会社だけでも20近くの酒蔵が加盟していることです。 実は、これまでも、アメリカではSAKEが造られていましたが、端的に言えば、日本資本による日本に親和性のあるコミュニティへの販売が主流でした。
しかし、2010年代以降になると、非日本人が非日本人を対象に、SAKEを製造し販売する流れが生まれました。これが、「北米酒造組合」の設立につながります。 彼らは非日本人を対象にしたマーケティングを行い、斬新なラベルデザインに、商品の設計についても、イノベーティブなSAKEを製造しています。 SAKEに限らず、他の日本の伝統的な発酵食品も、現地の人が、現地のコミュニティのために製造、販売する動きが出てきています。