「希望はあるのか、世界に未来はあるのか」“イカゲーム2”で監督が描いた世界の分断
「イカゲーム」のシステムとルールを知っているギフンは、この死のゲームをやめさせようとプレイヤーたちを説得するのだが、なかなかうまくいかない。自分だけは大丈夫、と思っている人のなんと多いことか。欲だけでなく、正常性バイアスも人の目を曇らす。これもまた現実社会の縮図だ。 イ・ジョンジェ:「シーズン1の後、ありがたいことに世界中のファンやメディアの方に会い、非常に多くの経験をしました。そこで学んだのは、私たちが世に出すもののテーマや主題がいかに重要であるかということ。つまり『イカゲーム』の成功は、そのテーマが世界中の多くの観客の共感を呼んだからだと実感しました。ですから俳優として今回そのテーマをどれだけ生々しく表現出来るかに、意識を傾けました。でも同時に、テーマに集中しすぎると、番組全体が少し重くなりすぎる。だから適切なバランスを取ろうと努力しましたね。また、シーズン2の状況はすべてシーズン1に由来しているため、前回ギフンはどのような感情を経験したかを思い出すことにも時間をかけました。番組をもう一度見直して記憶を掘り下げ、監督にもたくさんの質問をしました」
主人公がゲームに戻る理由と監督が全員に投げかけたかった問い
実はこの取材はアメリカ大統領選の最中に行われたが、この後、韓国ではユン大統領による戒厳令の発布と失効、そこから大統領弾劾という一連の事態が起きた。そこでは「投票」の意味が本当に重く、保守勢力である与党議員を説得する野党議員は、まるでギフンとその仲間のようである。実際にはドラマの方が先に作られていたのだが。 ファン監督:「シーズン1終盤、ゲームの陰にいるVIPの存在がわかります。あれは誰か特定の人物を表すのではなく、富であれ政治的影響力であれ、現在のシステムを作りそれを維持したい人、既得権益者のイメージとして私は作ったんです。シーズン2では、ギフンはこれらすべての背後にいる首謀者を見つけようとします。それが彼がゲームに戻る理由です。しかし、シーズン2と3で私が見せたいのは、悪人をギフンが止められるかどうかではありません。それよりも、私たち、つまり弱い立場にある人々に、世界をより良い場所にしようとする意志と強さがあるかどうか、という問いかけでした。それをもう少し大きなスケールに広げると、人類は、人間として、世界の流れを変えるために必要なものを持っているでしょうか。そして、より良い世界を一緒に作るために、私たちは欲望を手放すことが本当にできるのか。私が提起したかった問いの一つはこれです。だからゲームの背後にいる人物の詳細を描くことにあまり興味はありませんでした」