甲子園2度出場の強豪・八千代松陰 夏ノーシードからの挑戦
選手それぞれで何が原因や課題なのか、明確に理解させる。そのうえで考えてプレーする。この流れが大事であり、兼屋監督はこれが伸びる選手の条件だと捉えている。 その条件にマッチしているのは2019年の世代だ。この年、八千代松陰は千葉大会で準優勝した。「考えて動ける世代だったし、特にエースの川和田(悠太)はピカイチでした」と当時を振り返る。
また、当時の主力で、現在はヤクルトに在籍する長岡も兼屋監督の重視する考える習慣が身についている教え子の1人だった。 「たしかに守備は良くて、入学した時から周りよりもスピード感がありました。なので『少し動きが違うな』と思うところがありました。ですが、新チームから主力になってくれたらという見立てでした。 それから2年生の秋にケガをきっかけに打撃は向上しましたが、振り返ってみれば、考える習慣があったので、徐々に成長していって。自主練習の時間なんかも、やりたいことが常に頭の中にあったのか、上手に使える選手でした。 だから、こういう指導をしたから成長したという感覚があまりなくて、みんなと同じ練習をやっていても、取り組む姿勢が違いました」
ノーシードから甲子園へ
こうした先輩たちの姿について、副主将・根木杜弥は「(先輩たちの話は)時々聞きます」と語っており、「試合中に考えてプレーしていて、サインプレーなどがきっちり出来た時は『松陰らしいところを出せている』と、良いところを引き継げていると実感します」と話す。 主将・一宮知樹も、「少しずつ課題に向き合う姿勢は出来てきましたし、1つ上の先輩たちと比較しても遜色ないと思います」と時間が経つにつれて、徐々に八千代松陰らしい野球が根付いてきたようだ。
秋は2回戦で中央学院に6対16で敗戦。甲子園出場のためには越えなくて行けない相手を前に、多くの課題を残した。一宮主将は、「今年は自分たちから攻めて良ければいい試合展開ができたのに、あの試合は勝ち越すことができずに崩れてしまった」と反省を口にする。 オフシーズンは実戦練習を多く積んだ。秋を終えて「投手は仕上がっていませんでしたし、打線も、特にボールを捉える技術が足りていなかった」ということも含めて、実戦のなかでチームを鍛えてきた。 そしてシーズンが明けた4月、地区予選から登場した八千代松陰は、八千代、秀明八千代を下して県大会に出場。「自分たちで攻める野球は出来た」と秋の中央学院との一戦で出た課題をクリアできたと、根木は振り返る。 一宮主将を中心に、県大会では「春はシード権獲得、そして関東大会まで勝ち上がりたい」と目標を定めたが、初戦で県立船橋に惜敗。2対3と1点及ばず、夏はノーシードで大会に入ることとなった。 ただ、「最終的な目標は甲子園です」と一宮主将は見失うことなく、夏に向けて準備を続けている。そのためにも、「自分たちの野球への姿勢や気持ちが成長しないと、たどり着けないと思います」と、これまで以上に野球と向き合うことの重要性を一宮主将は語っていた。 春夏合わせて3度目の甲子園へ、ノーシードからの逆転を狙う八千代松陰の戦いに注目したい。