熊本と北海道 2つの震度6弱が教えてくれること
2019年1月3日、震度6弱という強い揺れに見舞われた熊本県和水(なごみ)町。「震度6弱」、「熊本県」という文字をテレビで見て、新年早々「大きな被害が出た『2016年熊本地震』の余震か?」と身構えた人も少なくないだろう。 ただ、同じ熊本地方でも、約3年前に何度も耳にした益城町などではなく、県北部の和水町という個人的には聞きなれない地名に最初は頭をひねった。地図を見ると、熊本地震を引き起こした領域から北に約20キロ離れた場所だ。 「これは熊本地震とは別物だろう」。そう思いながら、地震後に気象庁で行われた記者会見に出て、松森敏幸・地震津波監視課長の説明を聞いた。「福岡県と熊本県の県境近くで、いわゆる熊本地震の活動領域から離れている。一連の熊本地震とは別のもの」。その説明を聞き納得するとともに、「日本中、どこでも強い揺れに見舞われる可能性があることを改めて教えてくれる地震だ」と感じた。
北海道胆振東部地震の一連の活動
2月21日夜。北海道胆振中東部で大きな地震が発生した。昨年9月6日に発生した北海道胆振地震で震度7を観測した厚真町鹿沼で震度6弱を観測。気象庁は、先月の熊本の地震とは異なり、「北海道胆振東部地震の一連の活動である」との見解を示した。 これは、北海道胆振東部地震の活動域とされる南北約30キロの範囲で起きたこと、地下断面を見ても震央が北海道胆振東部地震以降に大小さまざまな地震活動が発生している場所に収まっていることなどから、まったく疑問を挟む余地のない見解だといえるだろう。 もし、震度6弱という最大震度のほかに、熊本で1月に起きた地震と共通項があるとすれば何だろうか、と考えてみる。一ついえるのは、いずれの地震も知られている活断層が動いたことによって発生した地震ではない、 ということだろうか。2016年の熊本地震は、地図上で見ると、布田川断層帯、日奈久断層帯が引かれた線と一連の地震活動が重なっていたため、これらの活断層が活動したことによる地震だということは、疑う余地がない。 しかし、1月の熊本震度6弱の震央付近には、政府の地震調査研究推進本部(地震本部)のホームページなどで調べても知られている活断層はない。北海道震度6弱は、西に石狩低地東縁断層帯が走ってはいるが、気象庁の資料を見ると、同断層帯から水平距離で10キロ以上離れた場所に地震活動が集中しているのが見てとれる。 北海道震度6弱の地震後の記者会見で松森課長は、活断層との関係について「近くにあることに留意してほしい。今回の地震が活断層に影響を与えたかどうかは別にしても、近くに活断層があるということは、いつ起こってもおかしくないと考えていただくべきだ」と述べたが、実際に起こったことから考えれば、活断層がないところであってもいつ激しい揺れを伴う地震が起こってもおかしくないということもいえるだろう。