沖縄本島縦断鉄道、計画は軌道に乗るのか 「経済波及効果の分析に着手」と玉城知事
沖縄県の玉城デニー知事は1日までに報道各社の新春インタビューに応じ、那覇市と名護市を結ぶ鉄道計画を巡り、「導入による経済波及効果の分析に着手している」と明らかにした。沖縄本島を縦断する鉄道の必要性を改めて国に訴える方針。 【写真】沖縄で戦後初となる鉄軌道として開業した「沖縄都市モノレール」の列車 沖縄に鉄道を敷設する計画は、総事業費6千億円を超える戦後最大のプロジェクトとされる。最高時速100キロ以上で走行可能な専用軌道を整備。有識者らで構成する検討委員会は平成30年、浦添市や宜野湾市、北谷町、沖縄市、うるま市、恩納村を経由するコースを推奨ルートとして選定している。 ただ、事業効果の目安となる「B/C」(費用便益比)は1を大きく下回っており、採算性の課題から計画は具体化していない。玉城知事は「費用便益比とは別に、鉄軌道導入に伴う社会経済的な効果を定量的に整理、把握する必要がある」との認識を示した。 県は引き続き、軌道や駅などの施設を自治体などが保有し、鉄道会社が運行を担う「上下分離方式」の特例制度創設を国に求めるとともに、「LRT」(次世代型路面電車)やモノレールの整備も要請するという。 ■真価問われる玉城知事 沖縄本島では戦前、軌間762ミリの軽便鉄道が走っていたが、先の大戦で焼失。平成15年の「沖縄都市モノレール」(愛称・ゆいレール)開業まで鉄軌道が敷設されず、戦後は車社会が進んだ。その結果、交通渋滞が慢性化し、沖縄本島南部にある那覇空港からアクセスの悪い北部地域では経済発展が遅れている。 県は一昨年12月、宜野湾市内で鉄軌道導入に向けた講演会を開催したが、来場者に配られた資料は平成30年に作成されたもので、玉城知事の在任中に、計画がほとんど進展していないことを物語っていた。 沖縄は観光客の増加でレンタカーの需要は高止まりしているが、鉄軌道が整備されれば、レンタカー頼みだった観光客も一定数が列車利用に移行し、道路の渋滞緩和につながるとみられている。 沖縄県は人身事故に占める飲酒運転の割合が、平成2年から28年まで27年連続で全国ワーストを記録。29~30年、令和2年こそ汚名を返上したが、3年以降は再びワーストが続いている。県警幹部は「要因の一つに車社会がある」とみており、鉄道整備が実現し、列車での通勤が当たり前になれば、飲酒運転の連続ワースト記録も返上できるかもしれない。
観光資源に恵まれた沖縄だが、十分な振興策や景気浮揚策が図られず、地元財界関係者からは玉城県政に失望する声も出ている。文字通り、計画を軌道に乗せ、閉塞感を打ち破る局面転換を図ることができるのか。玉城知事の真価が問われている。