野菜ジュースをグビグビ飲んでも"野菜不足"は解消できない…「健康によさそうな食べ物」の意外なリスク
■スムージーには食物繊維がほとんど含まれていない 野菜不足を少しでも解消しようと、市販の野菜ジュースやスムージーを日常的に飲んでいる人も多いのではないでしょうか。そこで質問。野菜ジュースやスムージーは、野菜の代わりになると思いますか? たしかに、野菜ジュースやスムージーは野菜を粉砕してつくられるものなので、日ごろ野菜がとれていないと感じている人が思わず手にとるのもわかります。 ただし、市販の野菜ジュースの製造工程では、口あたりをよくする目的で食物繊維が取り除かれます。また、濃縮還元された野菜汁や果汁などを使うことが多いので、その過程で食物繊維やビタミンなどが損失しています。 これまでお話ししてきたように、野菜は血糖値の急上昇を抑えます。その効果が作用するのは食物繊維のおかげです。また、食物繊維が豊富な野菜はよくかむ必要があるため、早食いをせずにすみ、満腹感を得られやすくなります。こうした食物繊維がもたらす健康効果は、野菜ジュースやスムージーにはあまり期待できません。 ■血糖値が急激に上昇するおそれがある 野菜がもつビタミンやミネラルにも、製造および保存の過程で損失がおきていると考えられます。冷蔵庫で保存した野菜のビタミンが、4日後には約70%も減少していることも研究(*3)で分かっています。 加えて、野菜ジュースやスムージーは砂糖や濃縮還元果汁、食塩などで味が整えられたものもあります。また、糖質は液体でとると血糖値が上がりやすいため、食物繊維が取り除かれた野菜ジュースやスムージーを飲むと、血糖値が急激に上がる可能性があります。つまり、先ほどの質問の答えは、「野菜ジュースやスムージーは、野菜の代わりにはならない」となります。 だからといって、野菜ジュースやスムージーを完全に否定することはできません。製造過程で食材の細胞が破壊されている野菜ジュースやスムージーは、栄養素を吸収しやすくなっているというメリットがあります。また、β-カロテンなど製造過程での損失が少ない栄養素もあります。そのため、抗酸化作用や機能性成分の供給源としても期待できます。大切なのは目的に合わせて上手に取り入れることです。 野菜ジュースやスムージーを上手に取り入れるポイントは二つあります。 まず重要なのは、飲みすぎないようにすることです。調理も咀しゃくも必要なく、味も調整されている野菜ジュースやスムージーは、飲みすぎると前述の通りエネルギーや糖質をとりすぎてしまうおそれがあります。健康のために飲んでいるのに、飲みすぎて健康を損なってしまえば本末転倒です。野菜ジュースやスムージーは、野菜不足がどうしても避けられないときの非常用と考えてください。 そして、野菜ジュースやスムージーを購入する際は、食塩や果汁、砂糖などがなるべく添加されていない、野菜のみのものを選ぶことをおすすめします。 (注) (*3)畑江敬子, 酒井光子, 島田淳子 (1990) サラダ菜の品質に及ぼす貯蔵温度および湿度の影響. 日本家政学会誌 41(12), 1143-1149