釧路湿原の大量メガソーラーに土地買取で対抗、原野商法で取得した土地「手放したい」人々も
■原野商法で取得した土地を手放したい、という地権者 不動産会社のハウスドゥ! 釧路中央店(株式会社アースハウス)の店長、佐伯友哉さん(31歳)は、2年ほど前に入社し、不動産の仕事を始めるにあたってさまざまな人々に話を聞き回った。親戚の人を訪ねた時、経済価値のない原野を所有しているがどうにかしたい、という相談を受けた。 「価値がないことはわかっていましたが、売り出してみようと、ダメ元で売地として並べました。そうしたら、『ほかの不動産屋さんで断られたけど、扱ってもらえませんか』といった土地所有者からの連絡が入るようになりました」(佐伯さん)。通常、原野など経済価値の乏しい土地は扱わない不動産屋が多い。
原野商法の舞台の1つとなった釧路湿原。約40年前に土地を購入した人、あるいは土地を購入した親から相続した土地を手放したい、と思う人は多いようだ。照井さんが最近、取得した土地の元持ち主も、そのような人たちだった。 原野商法で湿原の土地を買った人たちのうち、「土地を手放したい」と思う人と、「固定資産税もかからないし、このまま推移を見たい」という人の割合はどのくらいなのだろうか。佐伯さんは、「いまは、半々ではないか」と見ている。
■不要な土地だが、環境価値のある土地をどうするか 所有者不明土地や不要土地などの問題に詳しい東京財団の吉原祥子研究員によると、全国で「不要な土地を手放したい」という人は多い。 その“証拠”として吉原さんが挙げたのが、「相続土地国庫帰属制度」への相談件数の多さ。登記手続きが済んだ土地で、不要なものを国が引き取る制度で、2023年4月にスタートしたが、2024年3月までに相談件数が2万3000件を超えた。
国に土地を受け取ってもらうにはさまざまな要件があり、土地管理費を含む負担金を納めなければならない。実際に国が受け取ったのは2024年5月末時点で460件だが、高い関心を呼んでいる。 不要土地を抱える人たちは、身近な市町村にまず相談することが多い。トラストサルン釧路によると、2012年に取得した湿原の場合、所有者が最初に釧路市役所に電話をかけ、「市が買い取ったり、寄贈を受けたりはできないが、湿原の土地の買い取りをしている環境団体がある」と聞いて連絡してきたという。