料理家・有元葉子が「14万円のオイルディスペンサー」を作った「切実な理由」
素材も技術も文句なしで100年使えるものに
縁あってご紹介いただいたのは、新潟の鍛工舎さんでした。イメージを伝え、イタリアの古くからあるディスペンサーの画像も参考にして、設計図を引いてもらって……。 それをもとにああでもない、こうでもないと少しずつ完成の形に近づけ、この形が出来上がるまで2年ほどかかったでしょうか。 そして、ついに出来上がった、銅製のオイルディスペンサー、本当に大満足です。素材も技術も文句なしです。ひとつずつ、心を込めて、時間をかけて作る作品です。 だからお値段は、市販のオイルディスペンサーとはかけ離れた、とても高価なものになります。 大切なオリーブオイルを毎日使うのに、使い勝手のいいオイルディスペンサーが欲しかった。その願いは、完璧に叶えられました。 液だれも液漏れも一切しません。継ぎ目はもちろん、蓋も内側まで美しく、手に取るたびに嬉しい気持ちになれる。 完成時に、製作してくださった鍛工舎の渡邉和也さんからこう言われました。 「仕上げがとても大変なので、1カ月に数個しかできないけれど、ひとつあれば、100年もちますよ」 つまり、私が作っていただいたオイルディスペンサーは、孫子の代までずっと使い続けられるということ。 しかも、お手入れがとてもらく。洗う必要がないのですから。中のオイルがなくなったら、新たにオイルを足すだけ。周りがべたつくこともないので、受け皿もいらない。 輪染みになんてなりませんから、きれいなクロスの上にもぽんと置ける。 作る側のお手間も時間もかかるものなので、本当に欲しい方だけに使っていただければいいかなと思って、販売はオーダー制にしていただいています。 ご注文から、2カ月くらいはかかるかな。100年使えるものですから、それくらい待つわよ、って言っていただける方に、と思っています。 ◇17年かけて、理想のオイルディスペンサーをようやく手にした有元さん。 続く中編「有元葉子の14万円のオイルディスペンサーは、なぜ『100年絶対に変わらない』と言えるのか」では、頭の中に描いたイメージをどうやって伝え、形にしていったのか。また有元さんは、どこからそうしたイメージをつかむのか。詳細をお伝えする。
風間 詩織(編集者)