欧州は米国との新たな通商戦争に備えを、ECB当局者が警告
[ウィーン/フランクフルト 12日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)の当局者らは12日、米新政権による保護主義政策が世界経済の成長を阻害する恐れがあると警告し、欧州は前回の通商戦争時よりも万全の備えをする必要があると訴えた。 トランプ次期米大統領は貿易赤字を削減するために全ての外国製品に10%の関税を課し、中国からの輸入品には60%の関税を適用すると表明している。 フィンランド中銀のレーン総裁はロンドンでの会議で、大幅な輸入関税は世界経済に悪影響を及ぼす可能性があると指摘し、「今日の地政学的対立、特に同盟国間の対立の中で、新たな貿易戦争は最も避けたい事態だ」と語った。 オーストリア中銀のホルツマン総裁は、トランプ氏の提唱する政策が実施されれば、米国の金利とインフレ率が高止まりし、他の地域の物価にも上昇圧力がかかるとの見方を示した。ウィーンで述べた。 「トランプ氏は本気であり、恐らくわれわれの予想よりも早く実行に移すだろう。その場合、市場はどのような予想をするだろうか。金利は高止まりし、インフレ率も上昇する(と予想するだろう)」とし、これに伴いドルやユーロ圏のインフレ率に上昇圧力がかかると指摘した。 ドルが上昇してユーロに対して等価に近づくと、特にエネルギーの輸入コストに目に見える影響が出てると予想。これによりECBが2%のインフレ目標を達成するプロセスが遅れる可能性があると語った。 レーン氏は、トランプ氏の1回目の任期の時に米欧の貿易摩擦が高まり、欧州は共同の対応策をまとめるに苦労したと振り返り、今回はそのような間違いを犯すべきではないと述べた。 「通商戦争が始まれば、欧州は2018年のように準備不足であってはならない」と強調。「(ECBは)権限の範囲内で、経済・金融安定の支えとして行動しなければならない。われわれがこの責任を全面的に担うことを誰も疑うべきではない」と語った。