少子化を解消するのに必要な出生率は日本のどこでも2.07なのか
人口置換水準はどうやって計算しているのか
この問題を考えるにあたり、まず、どのようにして人口置換水準2.07という数字が計算されるのかということを確認しましょう。シンプルな加減乗除ですが、面倒と思えば読み飛ばしてもらっても構いません。 [表1]は2015年の全国日本人人口を対象として、人口置換水準を計算するプロセスを示しています。スペースの都合で年齢5歳階級毎にまとめていますが、各歳別に計算するとより正確な値が得られます。 まず合計特殊出生率の計算です。母の年齢別出生数(男女児総数)を年齢別女子人口で割った値が、女子年齢別出生率になります([表1]では[2]÷[1]=[4])。この女子年齢別出生率を合計したものが合計特殊出生率であり、ここでは年齢5歳階級での計算のため5倍していますが、1.45という値になります。女子年齢別出生率は、年齢別に女性が一人当たり平均して何人の子どもを出産したかということを意味してもいますので、単位を「人」としても差し支えありません。ですので、合計特殊出生率は女性が一生に産む子どもの数として解釈されています。 合計特殊出生率はこれでよいのですが、人口の再生産をつかさどる出産は女性によってなされるものですから、人口置換水準を計算するには女児に限定した出生率が必要です。母の年齢別出生数(女児数)を年齢別女子人口で割った値が、女子年齢別出生率(女児のみ)となります([3]÷[1]=[5])。合計特殊出生率の計算と同様、5の値を累積して5倍すると0.71という値になります。これを総再生産率と呼びます。 総再生産率は女子1人当たり0.71人の女児を出産したということを意味するのですが、人口の再生産には女児が母親となるような年齢にまで育ち上がる必要があります。その間に死亡が発生しますので、女子年齢別出生率(女児)と、その女児が自分を生んだ時の母親と同じ年齢に達するまでの生残率の積が期待される次世代の母親数となります([5]×[6]=[7])。 [7]の値を累積して5倍したものが純再生産率という指標であり、0.70という値になります。これは2015年の母世代人口に対し、次世代の母世代人口は0.7倍の人口規模になるということを意味します。 人口の再生産とは、現在の母世代人口と次世代の母世代人口が同じ規模になるということであり、それは純再生産率が1の状態を意味します。この状態が成立するような合計特殊出生率の水準こそが人口置換水準であり、これは合計特殊出生率を純再生産率で割った値となります、2015年であれば1.45÷0.70=2.07です。