ドラクエ最新リメイクは脱「おじさんのRPG」なるか? 若者獲得と海外展開の試金石に
なぜ村の名前を教える人物がいたのかといえば、RPGに不慣れな人が遊ぶとき、その村がどういうものかきちんと伝える必要があったからだ。また、画面上に村の名称が表示されればそれも不必要なのだが、昔の作品にはそれもなかったのである。 今回のリメイク版ではそもそも、村や街に入るときにはそこの名前が画面上に表示される。何よりRPGは日本を代表するひとつのゲームジャンルであり、問題はほぼ解決したのである。しかし、今回のリメイクでも「ここは◯◯の村です」と言う人物は減らないし、リメイクであることを差し引いても説明的なセリフを喋るキャラクターが非常に多い(これが「ドラクエらしさ」なのかもしれない)。
また、ゲームバランスはかなり変化しているが、ザコ敵を倒してレベル上げする行為が必要なところはあまり変わらないし、何よりUI(ユーザーインターフェース)が古いのも変わらない。 何か買い物をするときは何度も決定ボタンを押さなければならないし、たくさんあるアイテムのアイコンは同じものが多く混同を防いでおらず、おまけに「まふうじのつえ」と「まどうしのつえ」が並んでいてどれがどれだかわかりづらい。 まとめてアイテムを売ることもできず、やられた仲間を教会で蘇らせるときもひとりずつ選択せねばならないなど、グラフィック表現が弱く不親切だったころのゲームを引き継いでいるのが明白だ。確かに新しくなったのは事実なのだが、レトロで保守的なゲームであることも間違いない。
■『ドラクエ』で若い世代・海外の層を狙う このようにHD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』は新しくも保守的なのだが、そもそも何を目指しているのかといえば「おじさんのRPG」を脱することだと考えられる。 スクウェア・エニックスは、日本向けの宣伝としてWEBドラマ「#ドラクエはいいぞ」を公開している。これを見ると、どういった層にアピールしたいのかが明白だ。 内容をかいつまんで書くと、「なんでもドラクエにたとえる父親の背中に子供が憧れ、その好きなゲーム(『ドラクエ3』)も継承する」といった内容である。同じ親としては目をそらしたくなる内容で、子供に尊敬されたいという気持ちはともかく、自分の好きなものを子供にも肯定してほしいというストレートな欲望を描く内容になっている。