大谷翔平らチームがシーズンを通してひとつに そして〝真のドジャース〟になった
【大谷ドジャース世界一の舞台裏②】 メジャー7年目の大谷翔平投手(30)とメジャー移籍1年目の山本由伸投手(26)が所属するドジャースが、2020年以来4年ぶり8度目のワールドシリーズ(WS)制覇を達成した。世界一の舞台裏には、何があったのか。全5回連載の2回目は、移籍1年目の大谷が〝真のドジャース〟になるプロセスを振り返る。(大リーグ取材班) スター軍団が団結した一体感でWS制覇。そして、大谷は昨年12月の入団会見で「優勝を目指しながら、欠かせなかったと言われる存在にまずはなりたい」と語り、そして、その通りになった。無論、入団時点で大谷は二刀流選手として、2度のア・リーグMVP(最優秀選手)を獲得するなど名実ともにメジャーのトップスターに到達している。しかし、そんな大谷でも常勝軍団のドジャースでの初期は〝様子見〟だった。こうキャンプ初日に明かしている。 「新しいチームなので1年目のつもりでまずは環境に慣れる。チームメートに慣れることが最優先」 開幕直後は元通訳の違法賭博問題が発覚。チームメートは、正直にすべてを明かし、精神的に傷ついた大谷に寄り添いサポートした。そんな気持ちに応えようとする大谷の意気込みが思いがけず〝落とし穴〟に。得点圏での気負いにつながっていた。 「シーズン当初は早くチームの一員になれるといいなと、それを結果で残したい気持ちが先行していたというか、ちょっと強かった。後半になるにつれてそういう気持ちも抜けて自分本来の打席が多くなってきた」 4月の得点圏打率・207、12本塁打で月間MVPを獲得した6月でさえ同・211だった。一方で地区優勝へ向かう勝負の9月には、同・556という驚異の勝負強さで打線を引っ張った。 大谷の野球に真っすぐな姿勢は、入団前から知られていた。むしろ、真面目過ぎるがゆえに選手たちには、少々ミステリアスにも映っていたかもしれない。やや遠慮気味な大谷の性格を察してか、ムードメーカーの「キケ」こと、E・ヘルナンデスは7月5日の誕生日に日本語でメッセージを書いたボールをプレゼント。「お誕生日おーめでとう」とひらがなと漢字に苦戦しながらペンを握った。 世界一を勝ち取るための結束と一致団結の輪。大谷は、移籍1年目で圧倒的な個人成績を挙げることでチームに溶け込む一因とした。何より、WS制覇の結果と過程で苦楽をともに乗り越えたことで、周囲もそして大谷自身も〝真のドジャース〟になった。