「房総半島の人はトンネルを造るのが得意でしょ」現地を訪ねてわかった…千葉県に“世にも奇妙なトンネル”がつくられた“意外な歴史”
結局これといった手がかりは得られなかったものの、八雲神社に参拝することができた。
「房総半島の人たちはトンネルを造るのが得意でしょ」
また、改めてじっくりとトンネルを観察してみると、生々しい掘り跡に気づく。重機で掘ったような跡ではなく、ツルハシのようなものを用いて人力で削った跡がクッキリと残っていた。 佐藤さんのおっしゃった「房総半島の人たちはトンネルを造るのが得意でしょ。だからトンネルが多い」という言葉には、妙に説得力があった。たしかに、房総半島を探索していると、行政に頼らず、住民たちが自力で掘った素掘りのトンネルや防空壕が無数に存在している。 房総半島というと海のイメージが強いかもしれないが、実際には山も多い。そうした山地は砂泥互層というトンネルが掘りやすい地質でもあり、昔から当たり前のように自分たちでトンネルを掘ってきた地域なのだ。素掘りトンネルの多さでは、全国随一だと私は思っている。 山を削って穴を開け、物置や車庫にしている家も珍しくない。トンネルを自分たちで掘り、トンネルが身近な存在であった房総半島。かつて住民たちの手により掘られたトンネルは、現在は行政に移管されていることが多い。梅ノ木台2号隧道やそこから山王様に分岐するトンネルが行政により造られたものなのか、それとも住民たちが自力で掘ったものなのか、確証は得られなかった。 しかし、三島ダムが建設される際に、お社の場所を移す奉遷をせず、トンネルを掘って行けるようにしようと発想し、実行するあたりに、なんとも房総半島らしさを感じる。 真実が全て明らかになるのもよいが、少し謎が残っているものにも、また魅力を感じる。梅ノ木台2号隧道や山王様、そして房総半島のトンネル文化に対する興味は尽きない。今後もしばらく、房総半島を訪問することになりそうだ。 撮影=鹿取茂雄
鹿取 茂雄
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