【解説】離婚後の親権 77年ぶりの見直し “共同親権”導入で何が変わる?
最高裁判所の調査によると、全国の家庭裁判所が扱った子どもの親権をめぐる調停や審理の件数は年々増えていて、2011年は合わせて2970件だったのが、2020年には5098件まで増えた。審理期間も長くなっていて、平均8か月ほどかかっている。 改正民法では、いままで以上に家庭裁判所の負担が増えることになり、現状の家庭裁判所の体制のまま正しく判断できるのかという懸念が示されている。 ▼離婚後、日常の決めごとでも「共同」で決める? 共同親権になると、遺産の相続を決める「財産管理権」や、進学先、引っ越し先や住む場所を決めることができる「身上監護権」をもつことになる。 しかし、こういう場合はどうだろう? 例えば学校行事で、修学旅行に参加するかどうか、保護者である親のサインをする時に離婚した相手のサインも必要なのか。 このように、共同親権になると、子どもの日常的な決め事すべてを2人で決めないといけないのかという疑問が生じる。 ただ、今回の法改正では、習い事、ワクチン接種など子どもの日常的な決めごとは、「日常の行為」にあたるとして、共同親権でも「単独」で決めることができるとしている。 また、子どもの緊急手術や、高校や大学などに合格してから短時間で入学手続きが必要になる場合などは、「急迫の事情」があるとして「単独」で判断できるとしている。 ▼「急迫の事情」「日常の行為」の曖昧さ しかし、「急迫の事情」「日常の行為」が何を指しているのか、曖昧だという懸念も出ている。その懸念に対して国会での議論を受けて、改正民法では「急迫の事情」「日常の行為」はどういう場面に該当するか、具体的に記したガイドラインを作成することを付則に盛りこんだ。
■“共同親権”が新たに導入 改正民法の今後は?
共同親権の導入にさまざまな意見がある中で改正民法が成立したが、家族法に詳しい早稲田大学の棚村政行・名誉教授は、「不安や懸念を少しでも解消するために、分かりやすい形で法改正の内容を周知することや運用の明確化、体制づくりに向けた支援の強化がポイントになる」と指摘する。 成立した改正民法は、2年後の2026年ごろをめどに施行される見通しだ。