【解説】離婚後の親権 77年ぶりの見直し “共同親権”導入で何が変わる?
最新の統計によると、日本では、年間18万組近くの夫婦が離婚し、そのうち未成年の子がいる夫婦の離婚は半数以上にのぼる。その8割以上は、母親が子どもの親権をもっている状態だ。 しかし、2021年に厚労省が、シングルマザーおよそ4000世帯を対象に調査した統計によると、離婚した父親から養育費を受け取っているシングルマザー世帯の割合は約28%にとどまっていた。裏を返すと、子どもを抱えるシングルマザーの約7割が離婚後に養育費をもらっていないことが明らかになっている。 この背景として、離婚後は単独親権のため、親権がない片方の親が子どもの養育について関与しなくなるからだと指摘されてきた。 また、離婚後に、親権を持っていない片方の親が自身の子どもに会いたくても、なかなか会えず疎遠になってしまうといった声もあがっていた。
今回の国会で審議をはじめるにあたって、小泉法務大臣は衆議院本会議で「父母が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが、子の利益の観点から重要であるとの理念に基づくものだ」と、法改正の意義について説明した。 「改正民法」が成立したことについて、子どもと別居する親などでつくる「親子の面会交流を実現する全国ネットワーク」代表の武田典久さんは「父母の離婚=親子の別れ、離婚したら子どものことに関与しづらいという流れが変わるきっかけになり、大きな意義を持つ」と話す。
■根強い懸念の声
一方で、懸念の声も消えていない。とくに多いのが「家庭内暴力(DV)」に関連したものだ。 ひとり親の支援などにあたるNPO団体「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」理事長の赤石千衣子さんは、「DVをする親にも共同親権が認められるのではないかという懸念は消えておらず依然として不安だ」と話す。 なぜか? ▼家庭裁判所の負担は増えるばかり 法改正では、両親の合意が難しい場合は家庭裁判所が親権の判断をするが、精神的DVを含む家庭内暴力などのおそれがある場合は「単独親権」にする、としている。 だが、家庭裁判所が判断するうえで、DVの客観的証拠がなかったら単独親権にしてもらえないのではないか、双方の主張を公平にみてくれるかどうかという不安があり、「そもそも家庭裁判所が虐待の有無を判断できるかどうか不安だ」という声もあがっている。 さらに、裁判所の負担も大きい。