駐日ジョージア大使 勝手の分からないしゃぶしゃぶ屋バイトで日本女性のやさしさとお土産文化を知り。「だから大使館にはお菓子がない日がほとんどありません」
◆辰野さんを通じて「お金以上に貴重なもの」を得た 私は辰野さんを通じて日本の女性のやさしさやお土産文化を知りました。 お土産をいただくことで、そのお店やその土地について印象づけられて興味が湧きますし、贈り主への感謝の気持ちも自然と深まります。 また、辰野さんからは、年齢もバックグラウンドも関係なく、心さえきちんとしていればどんな人とでも交流ができるのだと教えていただきました。 社会のことなど右も左もわからず、年の離れた大人との付き合いにも乏しい学生時代の私にとっては、自分とはまったく異なる人生を歩んでいる辰野さんのようなすてきな先人と接する機会をもてたことが、アルバイトによって得られた金銭以上に貴重なものでした。 諸外国では、学生がアルバイトするのは決して当たり前ではありません。ただ、日本と違って高校を卒業してすぐ大学に行くとは限らず、社会人になってから大学院に通う人もたくさんいます。大学の中に年齢的な多様性があるのです。 一方で日本は18、9歳でほとんどの人が大学に入学して4年後には卒業するという年齢的な同質性があります。するとそこで接する人たちのほとんどは同世代か、大学の先生や職員くらいになります。 日本以外の大学ではさまざまな年齢の、さまざまな仕事をしてきた人が集まり、それぞれのバックグラウンドに基づいた発言をすることで議論が豊かになるのです。 そうした側面が日本の大学には残念ながら少ないですが、代わりにアルバイトを通じて、学生たちは年齢も価値観も異なる人たちの姿に触れ、社会の営みについて学んでいるのではないでしょうか。
◆お菓子には、場を和ませる力がある 他に学生時代のアルバイトでは、ある大手通信会社のインターネット加入のお電話相談のオペレーターをしたこともあります。そうです、そんな時代もありましたし、そんな仕事もありましたよね。 外国人でも電話オペレーターができるか、という疑問も初めはあったのですが、そのときの責任者はありがたいことに、日本語がネイティブ並みに話せるからという理由で採用してくれたのです。 大学に行きながら、空いた時間に麻布十番(あざぶじゅうばん)へ仕事に通った、気兼(きが)ねない良い時間だったと思い出します。特に学生時代は、麻布十番に対する憧れが強かったのを覚えております。 その職場にいるのはいつも3、4人で、矢部さんという責任者の次に偉い女性が、いつも休み時間に近所のおいしいベーカリーのパンを買ってきてくれました。 学生時代、パンはコンビニの菓子パンがメインだったから、その職場に行くのがいつも楽しみでした。パンだけではなく、職場にはいつもお菓子がありました。 日本では、さまざまなシーンにお菓子がつきものです。それは場を和(なご)ませる力があるのだと、私はこの経験を通して身につきました。
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