大統領選までいよいよ半年弱、バイデン政権を悩ます「悪夢の1968年シナリオ」とは何か
■2人とも悩みを抱え、現状は「消耗戦」の様相 そして現状は、「トランプ氏は裁判」「バイデン氏は中東情勢」が悩みの種であり、選挙戦はいささか消耗戦の様相を呈している。 トランプ氏は、4月から「口止め料事件」の裁判がニューヨーク州地裁で始まった。ほかの3つの刑事裁判ではトランプ陣営の「遅延工作」が功を奏しつつあるが、実際に公判が始まってみると、やはり予想外のことが起きつつある。 トランプ氏にとっては、来る日も来る日も法廷に身柄を拘束され、さまざまな証言をじっと聞いていなければならないという事態がかなり苦痛のようである。つい法廷で「不規則発言」に及んだり、自前のSNS「ソーシャル・トゥルース」で不満をぶちまけたりしている。
その都度、裁判長に叱られ、ついには罰金を取られ、「今度やったら収監しますよ!」とまで言われている。いや、いくら前大統領だからといっても容赦してはもらえない。なにしろトランプ氏は刑事被告人なのだ。 他方、ジョー・バイデン氏を悩ませているのは中東情勢である。正確に言えば、パレスチナ問題に端を発して各地の大学で発生している「キャンパス・プロテスツ(Campus Protests)」だ。 今どき「学園紛争」とは驚きだが、ニューヨークのコロンビア大学を起点に学生デモが全米に拡散し、これからシーズンを迎える卒業式が中止というケースも増えている。すでに全米で逮捕者が2000人を超えているというから、尋常ではない。
なぜ、大学紛争がバイデン政権にとってマイナスなのか。現在の民主党支持者の間には、「上の世代がイスラエル支持で、若い世代はパレスチナに同情的」という亀裂が入っている。 昨年10月7日に起きたハマスのテロ攻撃に対し、バイデン大統領は当初は明確なイスラエル支援の姿勢だった。しかし、イスラエル軍がガザ地区へ侵攻すると、残虐行為に対する抗議の声が国内で広がり始めた。バイデン政権は途中からネタニヤフ政権に人道的配慮を求めるようになったが、何しろ素直に言うことを聞くような相手ではない。