「生成AI」から「暗号資産」まで 進化するビジネス知見ランキング
経営課題の解決や新規事業の立ち上げ、特定分野でのトレンド情報収集などさまざまな場面で、ビジネス上の知見を企業や人にシェアするスポットコンサルティングサービスが増えてきた。短期的な課題解決のヒントや専門知識を必要としているケースが増え、従来のコンサルティング契約より柔軟な形態が求められている時代といえる。 その代表的なサービスであるビザスクが、2024年にマッチングしたインタビュー約6万件から主要キーワードを抽出・分析し、2023年から2024年にかけてニーズが増えたビジネス知見のランキングを発表した。 「生成AI」は昨年に続き1位に 第1位は昨年に続き「生成AI」(前年比2.83倍)だった。昨年は前年比42倍という急成長を見せたが、今年の伸びが約3倍にとどまったのは、初期の注目から実務活用の段階へ移行したためと考えられる。 内訳をさらに分析したところ、「製造」や「セキュリティ」に関する知見へのニーズが高く、生成AIに対する関心が特定分野での深掘りや実践的な利用にシフトし、実践的なソリューションとしてビジネスに浸透しようとしている様子が伺える。 第2位の「リスキリング」(前年比2.56倍)と第10位の「中小企業」(前年比1.37倍)はともに初めてランクイン。中小企業向けサービス展開や業務改善等に関する知見、また従業員のスキルアップにニーズが高まっていることを示す結果となった。 第3位に「宿泊」(前年比2.51倍)が新たに登場し、昨年連続でランクインした4位の「インバウンド」(前年比2.50倍)と併せ、オーバーツーリズムが指摘されるほどになったコロナ禍以降の観光・旅行業界の活性化を表している。
昨年の「モビリティ」から今年は「MaaS」へと具体化
第5位に「暗号資産」(前年比1.80倍)、第9位に「フィンテック」(前年比1.40倍)がともに初登場した。背景には、両者が互いに影響を与え合う成長分野であることがあるだろう。市場の成熟や規制の整備・強化が進み、暗号資産とフィンテックの発展を後押ししており、企業や個人はこれらを統合的に捉えた戦略を立てる必要性が一層高まっていることが伺える。 第6位には「MaaS(Mobility as a Service)」(1.67倍)が初登場した一方で、昨年2位にランクインしていた「モビリティ」は今年、ランキングから消えた。これは、広い概念である「モビリティ」への関心が、「MaaS」という具体的なサービスモデルに移行したためと考えられる。実用化の進展に伴い、企業や自治体等が関心を高めていることが背景にありそうだ。 第7位には「翻訳」(1.63倍)が初登場した。理由として、グローバル化の加速や生成AIの普及による翻訳の進化があると考えられる。AI翻訳の精度向上により翻訳業務の効率化が進む一方、専門性や文化的なニュアンスが求められる分野では人による翻訳の価値が再評価されつつある。さらに、国際会議やイベントの再活性化、エンターテインメントやEコマース分野でのコンテンツローカライズ需要の拡大も影響しているとみられる。 これまで2023年から2024年にかけて特にニーズが増えたビジネス知見について見てきた。生成AIの実務活用や暗号資産・フィンテックの成長だけでなく、観光業の回復を示す宿泊やインバウンドのランクインからも、コロナ禍を経て変化するビジネス環境への対応が求められていることがわかる。 また、MaaSや翻訳といった分野への広がりから、技術革新やグローバル化の波がさまざまな業界に影響を与えていることがわかる。ランキングに表れたこれらのニーズが、これからの経済や社会をどう変えていくのか注目していきたい。
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