「職業病」予防・改善へ 奄美大島の企業、専門家伴走サービス導入
鹿児島県奄美大島の奄美航空(奄美市名瀬、有村昌造代表取締役社長)は、作業療法士や公認心理師が現場に入り込み、業務が原因で起こる肉体的、精神的な痛みや症状「職業病」の予防・改善を図る健康経営支援サービスを導入した。サービスを提供する龍郷町の合同会社「Mellow Amami(メロウ奄美)」の代表で作業療法士・公認心理師の平城修吾さん(36)や協力する作業療法士らが5月28日、導入現場の奄美空港(奄美市笠利町)を訪れて現場作業を確認し、従業員から聞き取りを行った。今後ワークショップなどを通じて、現場の声で多かった腰痛などの予防・改善策と働きやすい環境を共に創り上げていく。 「会社は社員が幸せになるためにあるもの。従業員の心と体の健康を保ち、安心して仕事に取り組み、一つになれる雰囲気を醸成するためにサービスの導入を決めた」。こう話すのは、サービスを導入した奄美航空の有村社長(59)。 同社では同社の20~70代の従業員約70人が勤務。カウンターでの搭乗手続きから航空機の誘導、手荷物貨物の積み下ろしまで、業務は多岐にわたる。有村社長によると、過去から腰痛に悩む従業員に加え、Iターン者など慣れない地で初めての業務に携わる社員も多く、心身の不調を招く面もあることから、従業員に心身両面で安心を提供できる施策を検討していたところ、平城さんの存在を知った。 サービスは大きく①アンケートや現場調査などによる職業病の特定や、学術論文に基づき労働生産性の損失額を算出する「分析」②平城さんら専門家が指揮するワークショップを通じて、関係者共同で業務上の課題を出し合い、解決に向けた合意目標や施策を決める「介入」③施策が定常的に導入可能かの確認やアンケートなどを通じた「効果検証」-の三つのフェーズ。 平城さんはサービスの特徴を「体に特化している点と、文化レベルで働き方を変容させる点」とし、「『この仕事だから仕方ない』と我慢するのではなく、従業員の皆さんと共に働きやすい文化を創りたい」と意気込む。 健康経営は国の戦略にも位置付けられており、経済産業省は「従業員などの健康管理を経営的視点で考え、戦略的に実践することで従業員の活力向上や生産性向上などの組織活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待される」と説明。各種補助金や助成金などもある。 有村社長は「従業員の中でも外部のサービス導入に対して、積極的な声と一歩引く反応がある。信頼関係を築いていくことが重要」と話す。 認証取得など包括的なサービスが多い中、奄美の両者の試みは、現場と共に創り上げる伴走型の取り組み。今後に注目だ。