「新保育制度」で子育てはどう変わる? 市町村が主体、認可施設を増やし質も改善
「認定こども園」の認可を一本化
最後は「認定こども園」制度の改善です。認定こども園は2006年10月からスタートした制度です。保育所と幼稚園の機能を併せ持つ施設で、例えば保育所の場合、親が働かなくなったら退所になりますが、認定こども園の場合は引き続き通えるというメリットがあります。 認定こども園には4つの類型があります。 (1)認可幼稚園と認可保育所が一体的運営を行う「幼保連携型」 (2)認可幼稚園が保育所機能を備える「幼稚園型」 (3)認可保育所が幼稚園機能を備える「保育所型」 (4)幼稚園・保育所いずれの認可もない地域の施設が機能を果たす「地方裁量型」 現在の制度では、認定こども園は幼稚園と保育所の両方の認可を取らなければなりません。幼稚園は学校教育法に基づいて、保育所は児童福祉法に基づいて設置されているので、財政措置はそれぞれ別々で、指導監督も文部科学省と厚生労働省という風に別々の官庁から受けるなど、事業者にとって煩雑な面がありました。 新制度では、「幼保連携型」は改正認定こども園法に基づいた一つの認可で済むようになりました。原則、都道府県が認可を行いますが、政令指定都市や中核市にも権限が与えられます。指導監督も統一され、財政措置も施設型給付に一本化されることになりました。
これまでよりも「設置しやすく」
今回の法改正では、幼稚園や保育所の認定こども園への移行は義務付けませんが、認定こども園は増やしていきたい意向です。根拠法や財政措置が一本化されるメリットとして、厚生労働省保育課は「事業者の手続きが簡素化されるので、認定こども園が設置しやすくなる」としています。 またこれまでは、例えば幼稚園型の保育所機能部分は認可外なので財政措置も手薄でしたが、新制度では施設型給付の対象として支援していくので、質の向上にもつながるとしています。 子育て支援策をめぐっては、もともとは幼稚園と保育所を一体化した「総合こども園」構想があり、それにすべて移行するという案もありましたが廃案になりました。また、株式会社などの参入も見送られています。
「量」だけでなく「質」も
新制度では、とにかく受け皿を新設していく方向だけではなくて、既存施設や新しい小規模施設などの財政支援にも注力しています。その理由について、厚生労働省保育課は「量だけでなく質も充実させて、親御さんに安心して預けられるようにしていきたい」としています。 東京都杉並区では昨年、母親らが認可保育所が足りない現状を受けて、区に異議申し立てをしたというニュースがありました。待機児童問題の深刻化など子育てをめぐる環境は現状、決して良いとはいえません。新しい制度のスタートで、こうした現状が少しでも改善されることを期待したいものです。 【動画】「熟論 日本の課題」待機児童問題と日本の保育のこれから