「早く死んでくれと思う時も」なぜ仲睦まじい夫婦、愛情深い家族ほど介護は苦しむのか…「思いやりの一方通行」の先に待つもの
◆プロの力が、介護を受ける側をより幸せにする 「介護は尽くすこと」だ。 どうか、そう思いこまないでください。 介護の目的は、介護を受ける方が、自分らしい生活を営めるようにすることです。 この原点に立ち返れば、周囲や地域の方たち、介護サービスの力を借りることが「思いやりを減らすことにはならない」と思えるのではないでしょうか。 なぜなら、介護・看護のプロフェッショナルに委ねたほうが、要介護者の本人にとってよりよい状況に改善できることが多いからです。 「家族のことは、家族が一番わかっている」。もちろんそうだと思います。 しかし、あなたがよくわかっているのは、元気な頃の家族で、介護が必要な状態になったら、これまでとはまったく違った面も出てきます。 そんなときこそ、私たち介護・看護のプロフェッショナルの助けが必要なのです。 介護、看護に従事している専門家たちは、身体・生活介助に関する知識・技術を専門的に学び、さまざまな利用者の介助を行ってきた経験がありますので、要介護者の接し方に長けているのです。 例えば、プロの技術の一端が垣間見えるものに、ボディメカニクス(人間の動作および姿勢にかかわる体の骨格や関節、筋肉や内臓などの各部位に力学原理を応用した動き、動作、運動、姿勢保持のための技術)を応用した身体介助(生活するうえで必要な「起き上がる」「座る」「歩く」ことが困難な人に行う手助け)があります。 介護・看護のプロである私たちは、体の骨格や関節、筋肉などの体の構造と力学を掛けあわせた介助技術を身につけ、介助を行う際に、お互いの姿勢や支え方を最適に保ち、最小限の力で介助できるのです。 つまり、介護する側とされる側、双方への負担を軽減することができるのです。
◆大切な人を守るために そうした専門技術に加え、プロの技術が如実に表れるのが「気づく力」です。 例えば、移動の介助を行う際には、要介護者を支えながら、体のバランスや力の入れ具合などに変化がないかどうかをより細かく確認しています。 また、食事の介助の際には、咀嚼(そしゃく)した食べ物を飲み込み、「嚥下(えんげ)」がスムーズにできているかどうかを注意深く観察し、入浴介助の際も、後頭部や肩甲骨、背中、お尻などの状態に目を配り、「褥瘡(じょくそう)(床ずれ)」が起きていないかどうかを確認しながら介助しているのです。 専門家の「目」が入ることによって、そうした体の変化や予兆を早期に発見し、悪化を防ぐための手立てを講じることができるのはもちろん、プロフェッショナルによる介護を取り入れることは、大切な人を守ることにもなるのです。 相手のことを考え、思いやるのなら、プロフェッショナルに頼りましょう。 そうすることが、あなたの介護の負担も減らし、パートナーとできるだけ長く、残された時間でよりよい生活を営むための助けとなるはずです。 誰の力も頼らず、1人で尽くすことは決して、相手のためにも、自分のためにもならないのです。 ※本稿は、『老老介護で知っておきたいことのすべて 幸せな介護の入門書』(アスコム)の一部を再編集したものです。
坪田康佑
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