1袋5キロと4キロのコメを中心に並べるスーパーの売り場（広島市西区）

　昨夏の猛暑の影響で2023年産のコメが品薄になり、広島県内のスーパーや飲食店が対応に苦慮している。コメの価格は高騰し、産地の業者とコメ卸の相対取引価格は6月に過去10年で最高になった。各社は仕入れのコストがかさみ、コメの特売中止や店頭価格のアップを余儀なくされている。値上げを検討する弁当会社もある。 【グラフ】6月のコメの相対取引価格 　スーパーのスパーク（広島市西区）は十分な量のコメを仕入れられなくなり、6月末に1袋10キロの特売を中止した。売り場には5キロと4キロを中心に並べる。主力の広島県産コシヒカリは5キロ約2400円で、前年より300円ほど上げた。地場流通大手のイズミ（東区）も1袋10キロの商品を少なくし、5キロに集約している。 　農林水産省によると、6月の相対取引価格は玄米60キロ当たり1万5865円。前年同月より14%上がり、13年8月以来の高値となった。全国のコメの民間在庫量は5月末時点で145万トン。5月末に150万トンを割るのは12年以来となる。主な産地のコメが高温障害に見舞われたところに、新型コロナウイルス禍が落ち着いて外食需要が回復したことが大きい。 　広島県産のコメを集荷・販売するJA全農ひろしま（安佐南区）は、近年では最少の在庫量で推移する。米穀部の塚本栄孝（ひでたか）部長は「外食需要の回復などで当初の想定より販売量が増え、在庫が少なくなっている」と説明する。農家の高齢化も在庫の減少に拍車をかけているという。 　コメ卸の食協（南区）は在庫を確保するため、新米が出る9月ごろまで販売量を抑える予定だ。23年産の価格は相場の上昇に合わせて約10%上げた。光熱費や資材費の高騰で22年産も値上げしたため、2年間で計15%ほどの上げ幅になった。 　武信和也社長は「生産者を守るため、仕入れ値の上昇も受け入れざるを得ない」と語る。 　飲食店や弁当会社も打撃を受けている。中区の居酒屋「彩菜館」では、コメの仕入れ値は6月は8キロ4千円を下回ったが、7月に約4500円に上昇。開店から24年間で最も高くなった。 　昨年1月には、サケや豚肉の値上がりで一部メニューを100～300円値上げした。それでもランチのご飯は、お代わり自由を続けている。倉本捷夫（かつお）店主は「うちの店の中心はご飯。客に満足してもらうため守りたい」と話す。 　弁当製造の広島駅弁当（東区）は、食材の仕入れ値の約2割をコメが占める。9月ごろに一部商品の値上げを検討している。商品戦略部の大林敦部長は「新米も早い段階から引き合いが強くなりそう。仕入れ値が上がらないか心配」と気をもむ。